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とよあけ 花マルシェ コラム

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愛知県豊明市

清明、穀雨と、いつの間にか春の節気も最終章、日に日に強まる陽光を受け、初夏の花々が新緑を背景に咲きはじめていますね!「ええ、本当に。そういえば、この時季、近くの植物園に行くと、背の高い木に小さめの白い花がたくさん、ぶら下がるように咲いてるでしょ。ちょっと良い香りで、え~っと何という木だったかしら?」初夏にたくさんの白い小花が咲く、香りのよい木と言えば卯の花が思い浮かぶけど、背が高いとなると~?お、それはエゴノキではないでしょうか?「そうそう、エゴノキでした。たしか万葉集に別の名で登場するって看板に書いてありました。」そうですか。では今回はエゴノキのお話ということで。
エゴノキは日本をはじめ、東アジアに広く分布するエゴノキ科エゴノキ属の一種です。万葉集にも「ちさ」の名で詠われ、江戸時代には人形浄瑠璃『伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)』に登場する等、古くから日本人の文化にかかわってきた花木です。
エゴノキの花にはいくつかの特徴があり、そのひとつは花に香りがあること。エゴノキ属は中国語で安息香属(アンシーシャンズー)(アンソクコウゾク)。安息香(あんそくこう)とはバニラのような強い香りを放つ安息香酸(あんこくそうさん)の香りを表す名詞で、エゴノキからもこのような香りがしてきます。また、エゴノキはサクラのように花柄(かへい)が長く、花は枝から垂れ下がるように咲くので、木が伸びて、高いところで咲いても花を観賞しやすいです。そして、花は一斉に咲き、一斉に花が萎(しお)れる傾向が強く、惜しむように花が散っていくサクラに対して、ドライなイメージが感じられます。これらの特徴は万葉集の歌にも読み取れるので、最後に紹介し、今回はお別れです。
おっと、ひとつ言い忘れました。エゴノキの花や果実には「エゴサポニン」という泡立ちやすい毒素が含まれているので、触ったら手を洗ってくださいね!
「氣緒爾 念有吾乎 山治左能 花爾香公之 移奴良武」(巻七1360/息の緒に 思へる我れを 山ぢさの 花にか君が うつろひぬらむ/あなたのことを命がけで想っているのに、エゴノキの花がしぼんでしまうように、あなたは急に心変わりしてしまったんですか?)
「山萵苣 白露重 浦經 心深 吾戀不止」(巻十一2469/山ぢさの 白露重み うらぶれて 心に深く 我が恋やまず/エゴノキの花が垂れ下がっているように、心沈みつつも、あなたを忘れられない私です。)

執筆 愛知豊明花き流通協同組合 理事長 永田晶彦

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