新潟市内には16カ所の潟があります。
潟は市の鳥「ハクチョウ」を含む渡り鳥の貴重なすみかであり、多様な生物が生息・生育する、自然豊かな場所です。
◆私たちが解説します「潟」の専門家
新潟大学 名誉教授 大熊 孝さん
新潟国際情報大学国際学部 教授 澤口 晋一さん
2人の所属する「新潟市里潟研究ネットワーク会議」では、各潟の成り立ちや歴史などを調査・研究し、ガイドブックなどを作成しています。
▽私たちと自然をつなぐ「潟」
新潟市は、潟や水田、里山、海岸保安林など、人との関わりで作られた自然環境がたくさんあります。
越後平野にある湖沼のことを、新潟では昔から「潟(かた)」と呼んできました。市内に16カ所残された潟は、人が関わることで多様な動植物の生育や環境が保たれた「里潟(さとかた)」であり、自然と人をつなぐ、かけがえのない場所です。
▽世界に認められた「国際湿地都市・新潟」
新潟市は大都市でありながら水田面積が全国1位など、都市と自然が隣り合い共存する、類いまれな環境を持つ都市です。潟などの自然環境やそれを保全する人たちの取り組みなどが評価され、自然と共存する都市として、国内で初めて「ラムサール条約湿地自治体認証」を受けました。
▽身近な自然、「潟」に行ってみませんか
潟はその成り立ちも含めて、貴重な動植物や渡り鳥などの自然の豊かさや、生物多様性の恵みと大切さを感じさせてくれます。自然を感じると心穏やかになり、リフレッシュもできますよ。
また、地球温暖化などの地球規模の環境問題や自然災害への対策を考える上でも、住む場所の自然を知り、理解することが大切です。
まずは身近な潟に行って風に吹かれ、自然を感じてみませんか。
●トピック
○「ラムサール条約」とは
正式には「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」といいます。
条約の基準に沿って登録された湿地が「ラムサール条約湿地」で、新潟市では1996年に「佐潟」が登録されました。
○国内初「ラムサール条約湿地自治体認証」とは
湿地の保全・再生、管理への地域関係者の参加や、普及啓発、環境教育などを行う都市を認証するもので、新潟市は以下の内容が評価されました。
◎市の面積の44%が湿地※
※同条約の湿地の定義では、湖沼や河川のほか、水田なども含まれる
・水田面積が全国1位
・信濃川と阿賀野川の二大河川がある
・同条約湿地「佐潟」含む16の潟がある
◎コハクチョウ越冬数全国1位など、豊かな自然環境
◎潟の保全・再生活動などへの、地域住民や団体の参加
◆ラムサール条約湿地 佐潟(さかた)
場所:西区赤塚
面積:約44ha
周辺の砂層地形からの湧水でできた、小さな上潟と大きな下潟からなる淡水湖。コハクチョウなどの渡り鳥の集団渡来地として1981年に国指定佐潟鳥獣保護区に指定され、1996年にラムサール条約湿地に登録されました。植物は650種以上、昆虫類は1,000種以上、鳥類は210種以上確認されています。
▽佐潟水鳥・湿地センター(西区赤塚)
館内ではスコープで野鳥の観察ができ、野外観察用に双眼鏡の貸し出しも行っています。
時間:9時~16時半
※11~2月の土・日曜は7時から。月曜(祝・休日の場合翌日)、12月29日(金)~1月3日(水)休館
参加費:入館無料
問い合わせ:同センター
(【電話】025-264-3050)
▽佐潟を守る人たち
佐潟では地域住民が中心となって、湿地環境の保全の取り組みなどが行われています。
私たちは、佐潟を通して自然や歴史文化、地域活動を次世代につないでいくためにさまざまな保全活動をしています。
佐潟の水は湧水と雨水だけで流入河川がなく水質が悪くなりやすいため、潟内の泥揚げをする「潟普請(かたふしん)」や、潟に生えているヨシの刈り取りなどを地域の人や地元中学校、企業と連携して行い、人為的に手を加えて保全しています。また、水質の悪化やアカミミガメなどが原因で佐潟から姿を消したハスを、生物多様性を保つためにも復活させたいと思い、地元小学校と連携して取り組んでいます。
多くの人に佐潟に来てもらって、佐潟に関心を持ってもらい、自然環境や地域のことを自分事として考えてもらえたらうれしいです。
今、佐潟には多くのハクチョウが来ているので、ぜひ見に来てください。
-佐潟と歩む赤塚の会 代表 涌井 晴之さん
・潟普請やヨシ刈りは、潟の栄養が多くなりすぎないよう、養分を外に出す効果もあります(9月24日実施)
◆市街地に隣接する潟 鳥屋野潟
場所:中央区鳥屋野、ほか
面積:約158ha
中央区の市街地に隣接する潟。鳥類は180種以上確認され、冬には約4,000羽を超えるハクチョウが飛来します。潟マルシェなどのイベントや、潟内の栄養循環を良くするために「空心菜」を栽培するなど、市民団体により、さまざまな活動が行われています。
◆角田山の麓の潟 上堰潟(うわせきがた)
場所:西蒲区松野尾
面積:約11ha
一度干上がり陸化しましたが、1993年から数年かけて復元した潟です。四季折々の花などが楽しめ、わらアートまつりなどのさまざまなイベントが行われる上堰潟公園内にあります。
◆アカマツに囲まれた池 じゅんさい池
場所:東区松園
面積:西池約0.5ha 東池約0.3ha
市街地にある貴重な砂丘湖で、東池と西池からなります。東池にはスイレンやヒシ、西池にはジュンサイなどの水生植物が生育しています。
◆市内最大の潟 福島潟
場所:北区新鼻甲、ほか
面積:約262ha
13本の河川が流入する市内最大の潟。国の天然記念物オオヒシクイの日本有数の越冬地で、ヨシが島状に広がり、春には菜の花が咲き誇ります。毎年3月に、潟の環境保全のためヨシ原に火を付ける「ヨシ焼き」が行われます。植物は470種以上、鳥類は220種以上確認されています。
▽水の駅「ビュー福島潟」(北区前新田乙)
屋上から潟と越後平野を一望でき、館内では潟の動植物や歴史の展示、潟の中のライブ映像を楽しむことができます。
時間:9時~17時
※月曜(祝・休日の場合翌日)、12月28日~1月4日(木)、1月23日(火)~28日(日)休館
参加費:一般400円、小・中学・高校生200円(1~3階は無料)
問い合わせ:同施設
(【電話】025-387-1491)
そのほかの潟について詳しくは「新潟市潟のデジタル博物館ホームページ」に掲載しています。
<この記事についてアンケートにご協力ください。>