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健康講座(216)

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新潟県関川村

■非結核性抗酸菌症、特にMAC(マック)症について
坂町病院 副院長
近 幸吉

あと少しで雪が消え、春になるとまた住民検診のシーズンです。肺がん検診として毎年胸部レントゲン撮影を受ける方もたくさんいらっしゃると思います。今回は、検診異常で受診した方で最近著しく増加してきている非結核性抗酸菌症、特にMAC(マック)症について説明させていただきたいと思います。
[MAC症とは]
肺非結核性抗酸菌症の原因となる菌は結核菌と同じ抗酸菌の仲間です。それらの菌種が長い経過で主に肺へ感染巣を形成した疾患が肺非結核性抗酸菌症です。患者数は世界的に年々増加傾向であり、これまで100種類以上報告されています。しかし、実際に人に感染するのはその中でも約15種類ほどと言われています。日本においては健診を契機とした早期発見が多く報告されています。現在、非結核性抗酸菌症のうち日本国内で多いアビウムとイントラセルラーレの2菌種による感染症を区別せず合わせてMAC症と呼んでいます。日本では非結核性抗酸菌症のうちMAC症が圧倒的に多く、全体の80%を占めると言われています。
[MAC症の症状]
症状としては咳、痰、血痰、発熱、食欲不振、体重減少、全身倦怠感など多様な症状があります。しかしながら、無症状で検診のレントゲンで初めて診断されるケースが圧倒的に多く見受けられます。
[MAC菌の特徴]
MAC菌は自然環境中の土、埃、家畜などの動物の体内、水道・貯水槽などの給水システムなどに広く存在している菌種であり、菌を含んだ埃や水滴を吸入することによって感染すると推定されています。なお、結核菌と異なり菌が他人に移ることはありません。陳旧性肺結核症、慢性閉塞性肺疾患(タバコ病)、肺切除後などの既存の肺疾患を有している方や免疫低下に関わる病気のある方、抗がん剤治療中の方やステロイド投薬中など免疫抑制状態にある方に多いとされています。しかし、ここ最近は特に基礎疾患のない中年以降の女性の増加が顕著です。
[MAC症の治療]
現在、結核は一部の多剤耐性結核を除いて多くが治癒を期待できるようになったのに比較して、MAC症は治療がまだ確立していません。結核と類似した病気のため、オーソドックスな治療としては、クラリスロマイシンという抗生剤、エサンブトールという抗結核薬(以前はリファンピシンという抗結核薬も使用していましたが、現在では最も効果の期待できるクラリスロマイシンの効果を低下させるということで使用されなくなりました)を含めた2〜3種類の薬を併用し治療を行います(空洞形成症例や喀血を繰り返す、感染巣がかなり小さいなどの場合は手術を行う場合もあります)。内服期間は学会の指針では、菌陰性化後(喀痰から菌が検出されなくなってから)1年程度と定められています。多くは12ヶ月〜24ヵ月程度となります。胸部CTで空洞形成している場合は、治療期間を延長した方が良いと考えられています。ただし、高齢者や副作用の問題から十分な投薬ができない場合は、咳、痰などの症状を緩和する緩和治療で経過を見ていく場合もありますし、自然軽快することもあるため、軽症例や状態が落ち着いている方には経過観察のみを行うことも少なくありません。
[MAC症と診断された場合の生活上の注意]
MAC症と診断された場合の注意事項としては、日頃から住環境を清潔に整えることを心掛けてもらい、禁煙、規則正しい食事、十分な栄養や睡眠など良い免疫状態を保つ事が非常に大切です。またMAC症では軽症でも喀血、血痰が生じやすいのが特徴です。多くは少量で自然に軽快しますので、慌てずに主治医の指示に従うようにしてください。血痰の頻度や量が増えていれば、主治医と相談するようにしましょう。治療をするにしても、経過観察するにしても、この病気と長くお付き合いしていこうというゆとりをもって過ごすことが肝要です。

*このコーナーへのお問い合わせは、県立坂町病院へ。

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【電話】62-3111

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