文字サイズ
自治体の皆さまへ

受け継がれる伝統と匠の業(わざ)令和5年度新指定文化財「江戸手描提灯文字入れ」(2)

3/33

東京都千代田区 ホームページ利用規約等

[分廻(ぶんまわ)]し
文字の位置を決めたり、紋描きの際に正円を描いたりするコンパスのようなもので、なんとお手製。大きな提灯では1メートル以上のものを使うことも

[塗料]
書道の墨汁とは異なり、水性カラーの黒・緑・群青・赤の4色が基本。團十郎(だんじゅうろう)茶など歌舞伎役者ごとの特殊な色のオーダーにも対応可能

[文字入れ]
最も大切なのは、文字全体のバランス。提灯の面はぼこぼこで曲面だが、筆を上下させながら面に合わせて描くことが秘訣。長年培った技術は、下描きなしで最適のバランスを導き出す

「私自身もお祭りで見かける提灯に力をもらっています。自分が描いた提灯を持っている人を見かけるとやはり嬉しいですし、お祭りにずらっと並ぶ提灯を見ると本当にかっこいいなと感じます。この気持ちが、これからも自分にしか描けない提灯を作っていきたいと思う原動力になっています。」

◆江戸手描提灯文字入れ職人に迫る
内川偉全(あきのり)さん
職人歴36年

◇職人の道と技術の継承
提灯に縁もゆかりもなかった私がこの世界に入ったのは、父の友人からの紹介でした。
幼少期に書道を習っていたことや、元々模型作りが好きで立体の扱いに長けていたことから、文字全体のバランスを考え、曲面に文字入れを行う作業は自分に合っていたと思います。
古い考えだと言われるかもしれませんが、昔ながらの職人の技術は、教える、教わるというよりも、先輩職人の業(わざ)を見て、覚えていくものでした。今になって分かることですが、技術の継承は、お互いに「我慢」することだと感じています。未熟なうちはなかなか上手く描けませんし、先輩職人も口や手を出したくなる。そこをぐっとこらえてこそ、段々とモノになっていきます。
提灯は、祭礼や盆、年始の行事で使われることから、職人は春から夏にかけて、そして年末が迫るにつれて忙しくなります。手持ちのサイズであれば一日に30本くらい描きます。歌舞伎座の木挽町広場(こびきちょうひろば)に掛けられているくらいの大提灯になると、乾かす時間も含めて3日はかかりますね。
実際に製作している例を挙げると、みたままつりでは800個〜1000個の提灯を2か月くらいかけて製作しています。そして今年4年ぶりに開催された神田祭の提灯も製作しています。久しぶりの開催で、皆さん気合も入っていますから、こちらもより一層熱が入ります。

◇現在まで受け継がれる提灯の魅力
提灯の見どころは、何といっても祭りで立ち並んだときの壮観さにあると思います。みたままつりの提灯もそうですが、神田祭のとき、各町会の高張提灯が集まってくるところを見ると胸が熱くなります。実は神田祭の提灯に使われる字体や描かれている紋は、町会ごとに全く違います。どの町会のデザインも粋でいなせな江戸っ子を感じさせ、町の結束力を高めることにつながっていると思います。
2年後の神田祭にお越しの際は、ぜひ町会ごとの違いにも注目してみてください。

問合せ:日比谷図書文化館文化財事務室
【電話】03-3502-3348

<この記事についてアンケートにご協力ください。>

〒107-0052 東京都港区赤坂2丁目9番11号 オリックス赤坂2丁目ビル

市区町村の広報紙をネットやスマホで マイ広報紙

MENU