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自治体の皆さまへ

【特集】認知症 私にできること 出会える機会は、すぐそこに(1)

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東京都千代田区 ホームページ利用規約等

・料理をするのも好き。
そして食べてくれるのを見るのも好き。

・細かいことは話してくれなくてもいい。
少しづつ近づければ。

・絵を描き、ピアノを弾き、講演もする。
どれも、いまの自分。

・被写体は、無機質な建築物から自然へと変わった。
変わらなかったのは、カメラへの愛着。

「ひと足先に認知症になった、私たちの日常をお伝えします」

~パフェでも食べながら、好きな話をしませんか?~
■出会える「機会」は、すぐそこに
2025年、高齢者の5人に1人が認知症になると言われています(厚生労働省研究班 推計)。

認知症になると「何もできない」と自信を失い、仕事も趣味もあきらめ、ひきこもってしまう。
そして周囲も「何もできないだろう」と思いがちになります。
確かに、認知症になると、居場所もなかなか無くなるし、外出もしづらいという状況があるのも現実です。
実際に多くの方が、「さまざまな機会が減った」と感じているようです。

認知症になっても何もできなくなる訳ではありません。
「これからも自分らしく生きていける機会に出会えたら」すべてのご本人、ご家族の願いです。

そうした皆さんへの“機会”のひとつに、ありのままの自分でいられる“ある集まり”があります。
気軽に外出し、楽しい時間を過ごす場所。いま、そんな機会づくりの輪が広がっています。

◇認知症当事者への全国アンケート
・買い物に行く機会が減った…67.8%
・友人や知人と会う機会が減った…69.2%
データ出典元:「認知症の人にやさしいまちづくりガイド」
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター
認知症フレンドリージャパン・イニシアチブ

千代田区で行われている実桜(みお)の会は、認知症の本人やご家族が互いの近況を語らいながら、楽しい時間を過ごす場として、毎月開催されています。
3会場の内、2つはまちの飲食店。「他の方と同じように気軽に外出し、過ごしていただく機会を作りたかったから」と区の担当者。
この会を機会に、新たな交流も生まれているのだそうです。

■認知症本人ミーティング
認知症の本人が集い、本人同士が主になって、自らの体験や希望、必要としていることを語り合い、自分たちのこれからのよりよい暮らし、暮らしやすい地域のあり方を一緒に話し合う場です。
厚生労働省HPより

◇実桜(みお)の会スタート
訪れたのは、台風の接近で雨予報が出ていた八月のとある日の午後。
「雨大丈夫でよかった。でも蒸し暑いわ」。お互いに肩が触れ合うくらいの近さで、挨拶が交わされます。参加者の一人ひとりが訪れるたびに、温かい雰囲気が増していきます。
これが、区内で月に1回開かれている実桜の会の「いつも」の様子。
「本人」だけでなく、付き添いの「家族」も参加されますが、実はブースをあえて分けているとのこと。これは、それぞれが自分の気持ちを伝えやすくするためだそうです。
どちらも情報交換といった堅苦しさは無く、とにかく次から次へと楽しく会話をされています。
そんな傍らには、福祉や医療職、認知症の講座を終えた区民サポーターの皆さんなども顔を揃(そろ)えています。本人にとっても家族にとっても、頼もしい存在です。

◇ありのままの自分で
令和2年の冬に第1回がはじまり、現在38回になるこの会。参加者のひとりは「だんだんと会の厚みが増してきた気がします、熟してきたっていうんですかねえ」と笑顔で過去を振り返ります。

「他の人の想(おも)いを聞きましょう」
「他の人の想いを受け止めましょう」
「この場所で話したこと、聞いたことはここにおいて帰りましょう」

みんなが揃うと、ゆったり届けられる3つの約束事。「いつも」のことで、いたってシンプル。でも、この言葉の大切さを誰よりも知る皆さん。

さあ、身近な出来事や趣味の話など、ありのままの時間が始まります。

次回は9月13日「のん散歩」で会いましょう。

◇本人ミーティングのお知らせ
日時:毎月第2水曜14時~16時(デニーズ二番町店のみ15時~16時)
場所:かがやきプラザひだまりホール、デニーズ二番町店、カフェのん散歩での交互開催

問合せ:在宅支援課地域包括ケア推進係
【電話】03-6265-6485

■飯塚 正義 さん
Masayoshi Iizuka
「撮るだけじゃなくて、見てもらえるのも楽しい」
一昨年、認知症だとわかり、入院して手術もしました。もともとは、旅が好きで歩いてどこまででも行ってしまうような活動的な性格でしたが、病気がわかってからは、いろいろと億劫(おっくう)になりましたねえ。建築物の構造設計の仕事では、新しい技術を使いながらワイワイやってましたが、こちらも在宅に変わり外出する機会はどんどん減っていきました。
好きな写真は続けています。仕事柄マンションなどの大型建築物や超高層ビルを趣味で撮っていましたが、近所の散歩をするようになると植物などに目がいくようになりました。今年の2月には、入院していた病院で写真を展示してもらい、「癒されます」などの声をいただきました。嬉しいですよね。こういう言葉、励みになります。
この写真は「アオサギ、梢(こずえ)に立つ」と命名。キリリと頭を上げている姿に、前向きに生きなきゃと勇気をもらいました。いろいろな経験を積んだ方が参加している実桜の会も、とてもいい刺激になっています。

■佐藤 雅彦 さん
Masahiko Sato
「57歳から描き始めた絵で、世界が開けた」
45歳のときに違和感を覚えて、受診したところ、51歳のときにアルツハイマー型認知症と診断されました。当時は病気のことを調べるたびに「生きる力がなくなっていく」のを感じました。
その後、すべての認知症の方が、もっと前向きな人生を送ることができないかなと考えていく中で、少しずつ「不便であっても不幸ではない」と思うようになりました。
いまは認知症の講演を行うなど、さまざまな機会があるなかの一つに実桜の会があります。今日、着ているTシャツの絵は「大輪のバラ」、私の作品です。臨床美術といって、認知症の進行を遅らせる効果があるそうで、本当に楽しく描いています。
これからも、皆さんと一緒に「希望もって人生を送る」ということを考えていきたいと思っています。

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