文字サイズ
自治体の皆さまへ

戦後78年目の夏

2/44

東京都多摩市

終戦から78年目の夏が過ぎました。壮絶な戦火を潜り抜けてきた方々のお話しを直に聞く機会もめっきり減ってきました。
私の父は、17年前に79歳で亡くなりましたが、一度、戦争の話をきいたことがあります。
父は学生時代に、現在放映されているNHKの連続テレビ小説「らんまん」のモデルとなった牧野富太郎博士の薫陶を受け、牧野門下の道を進みました。
私は子どもの頃、父が採集した植物の標本作りを手伝ったりしていました。新聞紙に水分を吸わせ植物を乾燥させるのですが、その新聞紙を用意し、交換するのが私の仕事。そのうち、私は四コマ漫画や新聞記事の方に目がいってしまって(笑)。
その父は、戦時中に、現在の武蔵野市にあった中島飛行機武蔵製作所に学徒動員として派遣され、「零戦」「隼」など戦闘機のエンジン製作現場で働くことに。
同工場は、昭和19(1944)年11月24日、東日本地域では初のB29爆撃機の空襲を受け、その後9回もの爆撃により、工場や街全体が破壊されました。
激しい空襲の中、艦載機の機銃掃射を受け、傍らにいた友人を亡くしたそうです。
この夏、JR線武蔵境駅近くにある「武蔵野ふるさと歴史館」の資料展「戦争と武蔵野」で、昭和20(1945)年2月17日の5回目の空襲は、航空母艦の艦載機によるものであり、大変な被害だったことを知りました。
もう話をきくことはできませんが、押し黙り、遠くを見る父の顔を今でも思い出します。

(多摩市長 阿部裕行)

<この記事についてアンケートにご協力ください。>

〒107-0052 東京都港区赤坂2丁目9番11号 オリックス赤坂2丁目ビル

市区町村の広報紙をネットやスマホで マイ広報紙

MENU