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新春対談 新宿の昔と今、未来を語る(1)

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東京都新宿区

〔変化とともに成長し続けるまち〕

・新宿区長 吉住 健一

・喜劇役者 伊東 四朗さん


区長:伊東さんは学生時代、新宿にお住まいになっていたそうですね。
伊東:疎開先の静岡から戻って、国立市、文京区を経て新宿の淀橋・十二社(じゅうにそう)通りに移り住んだのが昭和29年。まさに高校生、17歳の「青春(アオハル)」の頃を新宿で過ごしました。
区長:淀橋に池があった頃でしょうか。その頃の新宿はどのような雰囲気のまちでしたか。
伊東:それまで新宿を知らなかったので、この時代にこんなに雑踏しているまちがあるのかと驚きました。みんな生き生きとしていましたよ!新宿は。
区長:多くの人が行き交い賑わう様子は今とつながるところがありますね。
伊東:1回来た人も、また次に来ると変わるという楽しみがあったんじゃないのかなと私は思います。
区長:伊東さんは当時、お正月はどのように過ごされていましたか。
伊東:昔の正月は静かなものでしたよ。今みたいに大勢で初詣に行くようなことはなかったですね。そんなに贅沢(ぜいたく)していませんでしたから、お餅が食べられるだけでうれしかったな。
区長:この新宿歴史博物館では、昔の新宿の様子などを展示していて、東京市電(後の都電)の復元模型もあります。都電にはよく乗られていたとか。
伊東:ええ、高校への通学で乗っていました。都電は好きでしたねぇ。あのガタン、ガタンという音がなんとも言えず好きでした。卒業後は早稲田大学の生活協同組合で時給30円のアルバイトをして、その通勤も都電でした。遅番の日は必ず伊勢丹の屋上に寄って、新宿からちょうど建設中の東京タワーがだんだん伸びていくのを見るのが楽しみでしたね。
区長:私はテレビの「電線音頭」などで伊東さんを拝見した世代ですが、最初の仕事は舞台で、きっかけも新宿だそうですね。
伊東:兄の影響で喜劇が好きになって、新宿の劇場に通っていました。いつも、同じ座席に座っていたので、出滅者とは顔見知りになって、そのうち「舞台に出てみないか」と声を掛けてもらって、その方がつくった劇団に出させてもらったんです。当時は自分が役者をやるなんて思ってもみませんでしたが、それから65年続いています。フランス座やセントラル劇場、だいぶ経って、新宿コマ劇場にも出させてもらいました。自分が観に行っていた劇場に出演するというのは、「俺もここまで来たか」って、感慨深かったですねぇ。
区長:喜劇人として歩み始めたきっかけが新宿だったんですね。お正月の劇場にも出派されましたか。
伊東:出ていましたね。一番うれしいのは、お客さんが増えるんですよ。満杯になりますね!
区長:芝居の後は、新宿で食事やお酒を楽しまれたのでしょうね。
伊東:楽しみました。お客さんが「一緒に行くか」なんて、ご馳走してくれる時はちょっといいところへ。真夜中に芝居の稽古をした後、西口の横丁で朝ごはんを食べるなんてこともありましたね。
区長:私も歌舞伎町で飲んだ帰りに西口の横丁に寄ったりしたものです。今は「思い出横丁」となって、観光客もよく訪れています。


伊東:私は西口側に住んでいたこともあって、『西口物語』というレコードを出させてもらったことがあるんです。ですから、西口には愛着と親しみがあるんですが、これがトンネルをくぐって東口に行くとガラッと雰囲気が変わりますね。そこが新宿の面白いところ。東口は建物が洒落ていました。伊勢丹や新宿高野もあって、ただ、歩いているだけでもウキウキしましたよ。
区長:まさに新宿はまちごとにさまざまな一面を持っているというのが魅力の一つです。
伊東:昔から、みんなが日指してくるまちでしたね。一度は行ってみたいという。そういう華やかさがある一方、昔のまちの名前が残っているのもうれしい。百人町や矢来町……、まちの名前を見ただけで歴史を想像できますからね。
区長:地域の皆さんから名前を変えないでほしいという要望が以前にあり、名前を残すようにしているんです。江戸時代からの名前が今も残っていて、区民の皆さんに愛されています。例えば百人町の地名は、徳川幕府が江戸の警護を固めるために鉄砲組百人隊を住まわせていたことに由来し、「鉄砲組百人隊行列」は区の無形民俗文化財として登録され、今でも祭りやイベントで火縄銃の試射が披露されるなど、地域の歴史を受け継いでいます。
伊東:それはいい!ぜひ、これからも大切にしていただきたいですね。一方で、新宿は「ジッとしていないまち」、そこも魅力。昔の流行歌にも「かわる新宿」とうたわれたくらい。伝統的なものは残して大切にしながら、変わるところは変わる。柔軟性はあっていいと思います。

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