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特集「すぎなみビト」日本語教育実践家・嶋田和子(2)

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東京都杉並区

■杉並区の子ども日本語教室の立ち上げに力を注いで
Q:杉並区の子ども日本語教室の立ち上げの経緯を教えてください。
A:私自身、これまで全国各地の子ども日本語教室の現場を見てきました。そして2年前、杉並区交流協会から「子どもの日本語教室を作りたい」と相談を受け、教室の企画・運営を担うことになりました。私は杉並区が地元ですし、今もこのまちで暮らしています。たくさんの現場を見てきた経験を生かして、ぜひ杉並区のために力になりたいと思い、杉並区交流協会の評議員と子ども日本語教室の統括コーディネーターを引き受けました。

Q:開講まではどのような流れで進みましたか?
A:4年10月に日本語学習支援ボランティア養成講座をスタートさせ、講座を受けたボランティアの皆さん26名と一緒に、今年の1月末から教室を開いています。4月からは、高円寺地域で小学生、済美教育センターで中学生を対象に2カ所運営しています。現在に至るまでには、杉並区交流協会、教育委員会、杉並区、そして私の仲間たちとたくさんの対話を重ねてきました。こんなにもさまざまな機関や人々が協働し教室を作り上げるということは珍しく、杉並区の素晴らしさを改めて実感しました。

Q:日本語を教えるときのポイントや、大切にしていることはどんなことですか?
A:教室には各国の子どもたちが通っていて、最初の「はじめまして」から、基本的には日本語で教えていきます。そこで大切になってくるのは、学習者一人一人に寄り添って、「教える」のではなく「学ぶ力を引き出す」こと。杉並区の教室でもボランティアの皆さんには「子どもたちが学びたくなる教室にしよう!」と伝えてきました。

Q:自ら学ぶための力を引き出すことが大切なのですね。
A:例えば、魚が欲しい人に魚を与えるのではなく、魚の取り方を教えるのと同じ。教室に来た子どもたちが日本語の学び方を学んでいくイメージです。教室に来るのは週に2回だけですが、帰った後に、もっと知りたい、学びたい、という思いが芽生え、自ら学んでみようと思うこ日時:自律学習となることを目指しています。さらに日本語教育では、学習者を社会的存在と捉えることも非常に大切です。学習者のこれから先の人生につなげるための日本語なのだということを心に置いて、子どもたちと向き合おうと、ボランティアの皆さんには伝え続けています。

■多文化共生社会のために私たちができること
Q:日本で暮らす外国人が増加する今、多文化共生を実現するための活動にも嶋田さんは尽力されていますね。
A:この数十年間で在留外国人はとても増えました。そんな中、日本で暮らす外国人は、言葉・制度・こころの3つの壁を感じているとよくいわれます。すぐになくすことができそうで、実はなくすことが最も難しいのがこころの壁だと思っています。また、日本語学習の機会と「やさしい日本語※」が広がることで、言葉の面でも壁は低くなってきています。実は「やさしい日本語」の「やさしい」が漢字ではないのは、「優しいこころ」と「易しい言葉」の二つの意味を持っているからなのです。
※普段使われている言葉を、外国人にも分かるように配慮した簡単な日本語。

Q:外国人と共に暮らすまちづくり、多文化共生社会のために私たちができることはどんなことですか?
A:多文化共生を実現する上では、もちろん日本語教育や多言語化といった手段も必要ですが、やはりこころの壁の部分、私たち日本人の意識そのものを変えていくことが求められます。相手が日本語を覚えればよいのではなく、日本人である私たちも、改めて自身のコミュニケーション方法を見直していく必要があるのではないでしょうか。その際には「対話」が一層大切になってきます。

Q:多文化共生の鍵となるのが「対話」なのですね。
A:「対話」は、会話でも議論でもありません。異なる価値観を持つ人同士が話し合い、他者と自己を理解した上で新たな価値観を創り出していく。それこそが「対話」です。他者との出会い、違いが、自らの「力」になるのだとぜひ知ってほしいです。

Q:多くの外国人と向き合ってきた嶋田さんが考える多文化共生社会とは、どんな社会ですか?
A:日本語教育に関わる中で私が一番うれしい瞬間は、教え子たちが「日本に来て良かった。自分の人生が開けた」と言ってくれたときなんです。「日本で生きていきたい」と話していたかつての留学生たちが日本社会に根を張り、活躍している姿は本当に励みになります。多文化共生の原点となるのは、外国から来た人も「自分たちと一緒に社会を作っていく仲間なのだ」という考えを私たちが意識の根底に置くこと。そして、もう一歩踏み込めば、外国人に限らず誰もが異なる価値観を持って生きられる社会、誰もが自分らしくいきいきと生きられる社会こそが、多文化共生社会ではないかと思うのです。

【CHECK!】子ども日本語学習支援ボランティア養成講座
日時:7月6日~9月21日の木曜日、午後1時30分~3時30分(8月10日・17日を除く。計10回)
場所:済美教育センター・区役所・区施設
対象:区内在住・在勤・在学で10月から子ども日本語教室に同ボランティアとして参加できる方
定員:25名(抽選)
申込み:杉並区交流協会ホームページから、6月4日までに申し込み

問合せ:同協会
【電話】5378-8833

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