特集「すぎなみビト」落語家 古今亭志ん輔(2)

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■探求し続けることをやめない。高座はいつも全力で
Q：長い噺(はなし)家人生の中で、落語そのものに対する見方や感覚に変化はありましたか?
A：以前は、高座は自分の持っているものをお客さんにぶつける場だと捉えていましたが、今は違います。今は、落語というものを道具にして、お客さんと共に空間をつくっていこうという気持ち。一方的に与えるのではなく、お客さんを取り込んでない交ぜにして、落語を通して一つの空間を共有していくのがいいなと思っています。それが私も楽しいし、お客さんも楽しいんじゃないかと思うのです。

Q：長くやっている演目でも、表現が少しずつ変わるなど変化はありますか?
A：いまだに、この一言は本当にこれでなければならないのか?と自問する瞬間はありますよ。長年使ってきた一言を変えることで、こういうことだったのか!とドミノ倒しのようにいろんな言葉が変わることもあります。ずっと師匠の落語をどうにか自分のものにしようとしてきましたが、どうしたって形にできないものもある。やればやるほど情けなくなる。そういうものは捨てていくしかない。私はよく芸を身に付けるのに「苔(こけ)なら生(む)したほうがいい、垢なら落としたほうがいい」という表現を使いますが、これは自分が付けてきたものが苔ではなく垢だったと気付いたら、洗い落として、そこに自分の苔だと思うものを少しずつ生していくしかないのです。

Q：志ん輔さんほどのキャリアでも落語がうまくいかないときはありますか?
A：もちろん、そんなことは山ほどあります。でも、逃げるのは性に合わない。高座に上がるときはいつも全力で挑みます。お客さんがなかなか乗ってこないときも、投げたりしないで100%の力でやります。中途半端なことが嫌いなので、100点か0点。そういう性格は、もしかしたら芸人には向いていないのかもしれません。探求していくことに飽きてしまったらおしまいだと思っていて、飽きたらあとはさびるだけ。そうならないように、時々エンジンを吹かすこともしながら、せめてアイドリング状態は保ち続けていこうと思っています。

■高円寺演芸まつりは芸人として鍛えられる良き鍛錬の場
Q：志ん輔さんは中野区に長くお住まいで、杉並区とも縁が深いそうですね。
A：杉並区はなじみのエリアです。高校も中央線沿線にあったので友達も多く、何かと思い出の多いまちです。特に、私は善福寺川沿いの桜並木が好きで、ただ散歩したり自転車で通るだけで、気持ちが良いですよね。春になって、満開の桜を下から見上げるのも最高です。
Q：現在開催中の高円寺演芸まつりに初回から毎年高座に上られていますね。
A：高円寺演芸まつりの立ち上げに尽力された、故・柳家紫文さんとのご縁で出演するようになり、座・高円寺の舞台のトリを務めてきました。毎年、新しい手帳の2月の欄に「座・高円寺」と書き込むと「ああ、そんな季節か」と思います。例えばヨーロッパのまちで、小さなコンサートがたくさん開かれる期間があったりしますが、言ってみれば高円寺演芸まつりもそういうものですよね。そのようなイベントを、しかも演芸で実現してしまう。高円寺というまちは大したもんだなと感心します。発想そのものもすごいし、実際に実現するためにはかなりのエネルギーが必要でしょう。そういったイベントを応援できる杉並区にはおおらかさを感じます。

Q：今年の座・高円寺での高座にも期待が高まります。
A：演芸まつりに来場する座・高円寺のお客さんは毎年雰囲気が違っていて読めない部分があり、芸人としては毎年鍛えられる良き鍛錬の場です。昨年は思いきって、新しい挑戦となるような演目を選びました。今年は何をやるのか、ぜひ楽しみに会場へいらしてください。私もまた高円寺で高座に上がれることを楽しみにしています。

寒い季節は、みんなで笑って心も体も温まりましょう!

日時：
・2月17日(土)(1)午後5時
・18日(日)(2)午後1時(3)5時
場所：座・高円寺(高円寺北2-1-2)

内容：
出演：
(1)林家彦いち、立川談笑ほか
(2)神田愛山、旭堂南海ほか
(3)古今亭志ん輔、桂文治ほか
問合せ：各256名(申込順)
費用：各3500円(区民割各3000円〔窓口のみ取り扱い。区民である証明書持参〕)。中学生以下各1000円
申込み：電話または直接、座・高円寺チケットボックスまたは同施設ホームページから申し込み
【電話】3223-7300(午前10時～午後7時。電話は6時まで〔いずれも月曜日を除く〕)

「ぜひ、お越しください!」

問合せ：高円寺演芸まつり実行委員会
【電話】050-3551-5569

■YouTubeで配信中!「すぎなみビトMOVIE」
すぎなみビト「古今亭志ん輔さん」のインタビュー動画を、本紙3面掲載の2次元コー
ドからご覧いただけます。

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