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特集 夏を彩る伝統の技-1

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東京都江戸川区 クリエイティブ・コモンズ

区内には江戸時代から続く技を継承し、後世に残そうと模索する伝統工芸者がいます。今回は涼を感じる扇子、硝子、風鈴を手掛ける3工房を訪ねました。匠の技はそのままに、現代の暮らしに合わせた伝統工芸品を生活に取り入れてみませんか。

■江戸扇子

◇細部に宿る手仕事の美
所狭しと道具が並ぶ工房で、江戸扇子職人・松井宏(まついひろし)さんが一人静かに机に向かいます。扇子の顔となる和紙を型紙に挟むと「呼吸を止めて一気に折ります。力加減が変わるとそろわなくなるんで」と真剣な顔つきに。扇子を閉じた際にぴたりと折り目がそろうよう、細部まで妥協しません。

江戸扇子は京扇子に比べ折幅が広く、シンプルで粋な柄が特徴です。分業制はとらず、細かい作業を含むと30ほどある工程は全て松井さんの手仕事。1本仕上げるのに4日ほどかかるそうです。

◇環境に配慮した社会で再注目
扇子は暑さをしのぐだけでなく、舞踊や落語、婚礼など多様な場面で用いられてきました。

近年ではファッション小物や環境に優しいアイテムとして再注目されるように。松井さんも伝統柄に加え、パステルカラーや左右非対称の扇子を手掛けます。

ただ、市場を占めるのは大量生産の機械製や安価な海外製。脈々と受け継がれてきた手仕事の技は、岐路に立たされています。

◇技の継承に課題
かつて都内に20〜30人いた職人は減少の一途をたどり、松井さんは「最後の1人になるかもしれない」と危機感を募らせます。

江戸扇子に限らず職人の高齢化や後継者不足は深刻で「個人での育成には限界がある」と吐露。一方で小学校での出前教室では、数人の児童が職人をやってみたいと手を挙げるといい「まずは知って興味を持ってもらうところから」と力を込めます。区内の伝統工芸者らと販売会や体験会を企画し、伝統工芸の魅力発信に汗を流しています。

問い合わせ:
江戸扇子工房 まつ井(外部サイトへリンク)(別ウィンドウで開きます)
https://edo-sensu.com/spn/
北篠崎2丁目24番3号
昭和8(1933)年創業
【電話】03-3679-6314

■江戸硝子

◇一期一会の色と輝き
「一つ一つ職人の勘で作るので、同じものでも表情が違うんです」。江戸硝子の製造から加工、販売まで手掛ける中金硝子総合株式会社の中村弘子(なかむらひろこ)代表は、手仕事ならではの魅力を語ります。
例えば赤色のガラスは、銅を中心に鉄やスズなどの金属を混ぜて作りますが、同じ配合でも温度などの条件で発色が違うそうです。

◇こだわりの品を求める若者
創業以来、色の異なるガラスを重ねて吹く「色被せ硝子」を製作し、ガラス細工の発展を支えてきました。色ガラスを薄く吹いた内側に透明のガラスを吹き込み、隙間なく熔着させて二層にする「ポカン工法」は、創業者で義父の金吾(きんご)さんが考案し、全国に広まった技法です。

2代目の桂吾(けいご)さんと結婚した中村さんは、子育てが一段落したのを機に切り子や彫刻などの加工作業を担うようになりました。現在は子や孫と力を合わせ、伝統の技を守っています。

主力のロックグラスやぐい呑みのほか、ランプや花瓶といったインテリア雑貨も手掛けます。最近はうれしい変化も。「20・30代男性の購入者が増えているんです。自分のために“ちょっといいもの”をという考えが広がっているよう」と笑みがこぼれます。

◇コラボレーションで広がる世界
コラボレーションにも熱心で「デザイナーの方には全く違う発想、思いがけないデザインをいただけるので面白いです」と江戸前寿司を模した小皿を見せてくれました。

さらに製作過程で廃棄するしかなかったガラスを加工し、キャンドルホルダーとして売り出すなど、SDGsを意識した取り組みも進行中です。海外への販路拡大も視野に、挑戦は続きます。

問い合わせ:
中金硝子(なかきんがらす)総合株式会社(外部サイトへリンク)(別ウィンドウで開きます)
平井2丁目11番29号
昭和21(1946)年創業
【電話】03-3684-4611

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