◆歴史や講談を知らない人でも楽しめる講談を提供したい
◇講談の魅力や、講談師のやりがいについてお聞かせください。
貞鏡:自分の人生経験を全て高座に出せることですね。大きなしくじりをしてしまっても針小棒大にお話しして、お客さまに笑っていただき、「私も頑張ろう」と思っていただけることが講談師としてのやりがいですね。それから講談の魅力は、何と言っても迫力と、日本語の美しさです。たとえば『柳生二蓋笠(やぎゅうにかいがさ)』という講談の中で、「つむりには越路(こしじ)の雪を頂き、額には青海(せいかい)の波を漂わせ腰に梓(あずさ)の弓を張り、いつしか姿は翁(おきな)と変わられおられました」という表現があります。お年を召した人を表しているのですが、このような美しい日本語を駆使して話していくのが、講談の素晴らしさだと思います。七五調なので、意味が分かりにくくても、うたい調子できれいに聞こえるんですよ。
◇貞鏡さんはピアノを弾きながら講談をしたり、女流寄席芸人と男装して演劇を披露したりと、ユニークな企画にもチャレンジされていますが、講談師としての今後の目標をお聞かせください。
貞鏡:ピアノ講談や男装劇を試みた理由は、「講談は難しそう」「古くさい感じがする」というイメージで講談をお聞きになったことがないお客さまにも、興味を持っていただきたいと思ったからです。私自身、初めて父の怪談噺を聞きに行った時、その姿や言葉が美しいとは思いましたが、それ以上に「なんとなく難しい」というのが正直な気持ちだったんです。私が講談師として活動をしていくからには、同年代の20〜40代の女性や、歴史や講談の知識がない人にも楽しんでいただけるような時間を提供したいと思っています。
◆笑顔になってもらうため、生涯をかけて精進を重ねていく
◇2024年はどのような一年にしたいですか。
貞鏡:今年は年初から災害や事故が相次ぎ、生かされている有り難さを痛感しました。忘れてしまいがちですが、毎日当たり前のように朝が来るのは、本当に有り難いことです。私たち芸人は、講談を聞いていただいている時間だけでもお客さまを夢の世界にお連れすることが仕事です。皆さまに笑顔になっていただくために、今年も稽古を重ね、お客さまに晴れやかな気持ちになってお帰りいただけるような講談を読んでいきたいと思います。
◇貞鏡さんにとって、渋谷区はどのような街ですか。
貞鏡:大都会であるにもかかわらず、血の通った温かさがあり、一見すると都会とは対照的な伝統文化も大切にしてくださる街だと思います。講談のみならず、さまざまな文化をもり立てようとしてくださっていますし、一時的ではなく、継続的な取り組みとして区民の皆さまに広めてくださっています。あらゆる分野において日本の最先端であると同時に、古来の義理人情を兼ね備えたハイブリッドな街です。
◇最後に、区民の皆さんに向けて、メッセージをお願いします。
貞鏡:私は生まれも育ちも笹塚でして、渋谷区には産み育てていただいたご恩がございます。このたび、真打に昇進させていただき、少しでも区民の皆さまに恩返しをさせていただきたいと思っています。芸人として高座の上でいい講談を読み、少しでも皆さまにお楽しみいただけるよう、生涯をかけて地道に精進を重ねてまいりますので、どうか応援していただけますと幸いです。よろしくお願いいたします。
≪「渋谷のラジオ」で放送中!≫
貞鏡さんへのインタビューは2月6・13日に「渋谷の星」で放送します。
■伝承ホール寺子屋 公開講座「やしょめ寄席6」のご案内
2月3日開催
令和5年10月に真打に昇進した七代目一龍斎貞鏡さんの真打昇進披露特別公演が開催されます。演芸界で活躍されている落語・講談・粋曲の女性芸人4人が集結。ぜひ、お気軽にお越しください。
日時:2月3日(土)17:30開演(17:00開場)
会場:文化総合センター大和田6階伝承ホール
出演:柳亭こみち(落語)、一龍斎貞鏡(講談)、林家つる子(落語)、柳家小菊(粋曲)
チケット:全席指定(税込)区民2,000円/一般3,000円/当日券3,500円(区民優待なし)※未就学児不可
申し込み:区民・一般ともに申し込み受付中
販売方法:文化総合センター大和田3階ホール事務室(10:00〜19:00)で直接販売。区民は区内在住・在勤・在学を証明できるものを持参。電話予約は公演日前日まで受付。
※当日券は、残席があった場合のみ開場時間より販売。車いす席はホール事務室にお問い合わせください。
問合せ:文化総合センター大和田3階ホール事務室
【電話】03-3464-3252(10:00-19:00)【FAX】03-3464-3289
問合せ:広報コミュニケーション課広報係
【電話】03-3463-1287【FAX】03-5458-4920
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