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新春対談(2)

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東京都狛江市

◆アテネオリンピックの経験
・市長
以前のお話になってしまいますが、2004年のアテネオリンピックの時に、中畑さんは長嶋茂雄さんの代行として監督を務め、日本を背負われました。当時を振り返ってみて、どんなお気持ちで臨みましたか。
・中畑
今でこそ、こんなにリラックスして喋っていますけど、あの1~2年ぐらいは全く冗談も言えなくて、プレッシャーのど真ん中に漬かっていましたね。「明るく生き生き元気よく、絶好調です」なんて、自分のキャラクターもセールスポイントも大体分かっているのに、その良さを一つも出せない…。見方を変えると、選手たちもプレッシャーの中にどっぷり入っているわけですよ。
・市長
周りからは勝つことが求められ、むしろ勝って当然だという空気ですよね。
・中畑
それを選手たちに意識させ過ぎちゃったかなっていうくらい、自分が意識してしまっていました。当時のヤクルトスワローズの宮本慎也から、「中畑さん、こんなすごいプレッシャーをよく引き受けましたね。だったら、このプレッシャーを僕たちと分かち合いましょうよ!」って言われて、心の底から本当に救われました。
・市長
温かいすてきな言葉ですね。中畑さんが精神的に参っていた時に掛けられた言葉だからこそ、本当に心に染みたんじゃないでしょうか。
・中畑
こんな喜びないですよ。それまで突っ張っていた緊張感がスーっと肩から抜けて、「ありがとう!一緒に頑張ろうな!」って、素直な気持ちで言えました。あの言葉がなかったら僕はつぶれていたと思います。コーチたちにも恵まれていましたし、良いチームでしたね。
・市長
お互いに信頼し合える選手やスタッフたちに囲まれていたんですね。
・中畑
その後、横浜DeNAベイスターズで監督をさせていただきましたが、アテネオリンピックの経験が非常に生きました。残念ながらあまり勝てなかったけど、野球界でこういう監督がいてもいいんじゃないかっていう役割をこなすことができたのは、この時の経験があってこそですよ。
・市長
監督として日本代表を背負うことになったのは予期せぬことだったと思いますが、中畑さん自身にとって非常に大きな財産になっているということですね。そういう意味では、人生の中で「流れ」ってありますよね。そのタイミングで、チャンスを逃してしまう人としっかりとつかむことができる人がいます。
・中畑
だからこそ、何事も動いてみないと分からないってことだと思います。まずは行動ですよ。良いものも悪いものも出てくるかもしれないけれど、行動力で人生は変わってくる。
・市長
私も全く同じ考え方です。成果はひとまず別にして、まずは行動ですよ。悪いものも結果的に勉強になるんですから。
・中畑
そう!だから、出会ったすべての人が指導者ですね。これまでの人生の中で、良い指導者たちに巡り合えてきたなって感覚があります。特に長嶋茂雄さんは、いつまでも僕にとっての憧れです。誰にでも変わらない対応をするあの優しさを見て、本当に太陽のような方だと思っています。

◆指導者の立場として
・市長
横浜DeNAベイスターズで監督を務められた4年間で、指導者として強く心掛けたものはありますか。チームという組織であっても、土台となるのは人ですよね。
・中畑
仰る通りです。一人一人が人として成長しなければチームも成長しません。チームづくりは人づくりだと常々思っています。
・市長
チームをまとめるためにどういった工夫をされましたか。
・中畑
指導者となって感じたことは、下からの意見って本当に大事なんですよね。それを上から目線で押さえつけてしまうような空気だけはつくっちゃいけないと思っています。常にコミュニケーションを取りながら、みんなが意見を言いやすい空気をつくることをとにかく心掛けました。
・市長
残念ながら、世の中には下が頑張ってやったものが潰されてしまうこともあるじゃないですか。
・中畑
ずっと変わらないことを良しとするのは、今の時代に沿わない考え方ですよ。守っていかなければいけないことと、変えていかなければいけないことをしっかり区別していくことが大切です。
・市長
安全圏にさえいれば良い人生を送れると思っている人たちは、何か事が起きても自分には関係ないという他人事目線になってしまう。
・中畑
行動しないで、結果だけ見て非難するという…。そういう人には本当に腹が立つんですよ!そこにくさびを打って、空気を変えていくには、指導者がどういう行動をしていくかがとても大事なんです。それができるのは発信力のある、上に立っている人だけです。
・市長
下の意見を正確にくみ取る必要がありますし、キャッチした時にはきちんと行動しなければいけないですよね。中畑さんのような人は下からも周りからも慕われて、頼み事もいろいろされるんじゃないですか。
・中畑
お願いされたことを断らないという人生もあるんじゃないかと。断ってしまった結果、悔いを残したまま人生が終わってしまうかもしれないですから。だから、「義理、人情、恩返し」が自分の人生における一つの大きなポリシーになっています。
・市長
「義理、人情、恩返し」という考え方は、中畑さんにピッタリですよね。人とのつながりを大事にしている中畑さんの人となりを端的に表している言葉だと思います。だからこそ、今までのお付き合いの過程で、本当に断れない時もありますよね。この人に頼まれたら断れないなってこととか。
・中畑
絶対断れないのは、長嶋茂雄さんと渡邉恒雄さん。この方々にノーは言えないですね(笑)。
・市長
でも、逆に中畑さんから頼まれてノーを言えない人もいるんじゃないですか(笑)。
・中畑
それはごまんといますね!…って、変なことを言わせないでくださいよ(笑)。

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