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自治医科大学附属病院 連携協働コラム(1)

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栃木県下野市

■食品添加物について考える
自治医科大学附属病院 管理栄養士 川畑奈緒

◆はじめに
食品添加物について、多くの人が「体に悪い」というイメージを持っていますが、食品添加物は本当に危険なものなのでしょうか。ここでは、食品添加物の安全性や役割について考えてみましょう。

1.食品添加物とは?
食品添加物は、保存料、甘味料、着色料、香料など、食品の製造過程や食品の加工・保存の目的で使用されるものです。厚生労働省は、食品添加物の安全性を確保するために、食品安全委員会の意見を聴き、その食品添加物が人の健康を損なうおそれのない場合に限って使用を認めています。さらに、使用が認められた食品添加物についても、国民1人あたりの摂取量を調査するなど、継続的な安全性の確保に努めています。また、食品添加物は食品中の微生物の繁殖を抑えることにより、食中毒のリスクを減らす役割も果たしています(1)。

[1]食品添加物の分類
日本では、食品添加物は表1に示すように4つに分類されます。「指定添加物」は、厚生労働大臣が安全性と有効性を確認して指定したものです。「既存添加物」は、長年使用されてきた天然添加物として品目が決められています。今後、新たに使用される食品添加物は、天然・合成の区別なく、食品安全委員会による安全性評価を受け、「指定添加物」として厚生労働大臣の指定を受けます(1)。

▽表1 食品添加物の種類(令和4年10月26日現在)

[2]食品添加物の安全性
食品添加物の安全性評価は、リスク評価機関である食品安全委員会が行います。具体的には、動物を用いた毒性試験結果などの科学的なデータに基づき、食品添加物ごとに「一日摂取許容量」(ADI)※1が設定されます。この結果は、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会で審議され、食品ごとの使用量や使用基準などが設定されます。ADIは、ラットやマウスなどの動物実験で、食品安全委員会や国際的な機関が無害と認めた量の通常100分の1の量を、毎日食べ続けても安全な量として設定しますが、実際にはこの量よりずっと少なくなるように法律で使用基準が決められています。このように、食品添加物の安全性はすべて科学的な根拠に基づいて評価され、リスク管理されています(1)。

※1 1人がある物質を毎日一生涯にわたって摂取し続けても、現在の科学的知見からみて健康への悪影響がないと推定される1日あたりの摂取量。

2.「無添加」「○○不使用」について
「無添加」「○○不使用」という表示の食品を見かけますが、これらの表示には行政で定められたルールがありませんでした。例えば「保存料不使用」と表示されていても、他の食品添加物で代替している場合があります。そこで、消費者庁は、令和4年3月30日に「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」(2)を策定しました。これにより、「何を添加していないのか不明確な表示」「無添加あるいは不使用を健康や安全の用語と関連付ける表示」「無添加や不使用の文字などが過度に強調されている表示」などに規制が入るようになりました。

3.食品添加物に含まれるリンについて
リンは、骨や歯、細胞膜の形成に必要なミネラルであり、エネルギーの生成にも使用されます。しかし、腎臓の機能が低下すると、体内のリンが過剰に増加し、血管の石灰化(動脈硬化)が引き起こされます。肉や魚などの食品に含まれるリンは主に有機リンであり、体内への吸収率は約60%です。一方、食品添加物に含まれるリンは無機リンであり、ほぼ100%吸収されるとされています。日本人の食事摂取基準2020年版では、18歳以上のリン摂取量は、男性は1日あたり1,000mg、女性は800mgが目安とされています。また、リンの耐容上限量※2は1日あたり3,000mgです。令和元年の国民健康・栄養調査によると、日本人のリン摂取量は1日あたり1,000mg前後であり、食品添加物由来のリン摂取量は1日あたり50~60mg程度と推測されています(3)。したがって、通常の食生活では食品添加物由来のリンによる過剰摂取は考えにくいですが、慢性腎臓病の患者さんや腎機能低下のリスク(糖尿病や高血圧など)のある方は、インスタント食品や清涼飲料水など、食品添加物の多い加工食品を極力控えることが望ましいでしょう。

※2 ほとんどすべての人に健康上悪影響を及ぼす危険がない栄養素の1日あたりの最大摂取量。

◆おわりに
新聞やテレビなどマスコミの情報は、報道機関が取材した情報や、第三者から提供された情報に基づいており、その信頼性は、情報源や報道機関の信頼性に依存します。「○○が危ない!」というインパクトを重視した情報に対して、国民1人ひとりが冷静に、「何で?」「科学的根拠はあるのか」と考え、信頼できる情報源からの情報を収集し、複数の意見を比較検討することが大切です。

◆文献
(1)厚生労働省.食品添加物.(2023年7月閲覧)
【HP】https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuten/index.html
(2)消費者庁.食品添加物の不使用表示に関するガイドライン.(2023年7月閲覧)
【HP】https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/assets/food_labeling_cms201_220330_25.pdf
(3)日本透析医会雑誌30(3),512-518,2015

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