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新・下野市風土記

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栃木県下野市

■関東大震災から100年
下野市教育委員会 文化財課

この広報紙が発行される2023年9月1日は、関東大震災(かんとうだいしんさい)(大正関東地震(たいしょうかんとうじしん))からちょうど100年目にあたります。この災害について、いま一度振り返ってみたいと思います。

〔以下のデータは、国立研究開発法人防災科学技術研究所ホームページ「自然災害情報室」を参照〕
地震名称:大正関東地震
発生日時:大正12(1923)年9月1日 午前11時58分31.6秒
震央:北緯35°19.8N、東経139°8.1E、深さ23km
震源域:神奈川県西部から房総半島南東沖
地震規模:M(マグニチュード)=7.9
被害概要:
死者約10万5,400人(うち火災約9万2千人、津波325人、土砂災害688人)
全壊家屋約29万4千戸(うち焼失家屋約21万2,400戸)
地震による地殻変動:隆起2m(房総半島布良(ぼうそうはんとうめら))、沈降0.8m(丹沢山地(たんざわさんち))、水平南東方向3~4m(房総半島から三浦半島にかけて)

上記のホームページでは、各地域の震度表が掲載されており、震度6が埼玉県熊谷市、千葉県館山市、東京都千代田区、神奈川県横須賀市、山梨県甲府市、震度5が千葉県銚子市、福島県いわき市、栃木県宇都宮市、長野県長野市、静岡県浜松市、京都府宮津町、震度4が福島県福島市、栃木県足尾町、茨城県水戸市、長野県松本市のほか、愛知県、滋賀県、大阪府、兵庫県、徳島県、福井県、富山県、鳥取県まで広がっています。
『小山市史』通史編3.近現代編には、この日の小山市(当時は小山町)周辺の天気は「朝から暴風雨に見舞われ、荒れ模様の天候であったが正午前には静穏(せいおん)に向かいつつあった」と記されています。また、「正午二分前、ごうごうたる音響と同時に大激震が人々を襲った。戸外へ飛び出す者、それを制止する者、すべての人々が慌てふためいた」とあり、現在の県南体育館に近い豪農の家では、庭内の灯籠(とうろう)十数基が将棋倒しのように倒れ伏し、穀倉の破損もひどく、当主は「実に自分生来の大珍事なり」と日記の記録を収録しています。さらに、小山町内の在住者は「製糸工場や酒造会社の煙突が倒壊、(仕込み用の)大酒桶3本が破損、土蔵の破壊は一様に東に面した側が壊れた」が、「家屋ノ全ク倒壊セルハ至(いたり)テ僅少(きんしょう)ナリ」と被害状況を日記に書き留めています。このほか、「東京ハ震災后(ご)火災各所ニ起リ、一日夜、東京方面ハ暁(あかつき)ニ激シク紅雲(こううん)天ニ漲(みなぎ)リ居(お)レリ」とも書き残しており、小山からも東京の火災がわかったことが記されています。筆者も以前、当時野木町在住であった縁者から、この関東大震災の日の火災により夜空が真っ赤に染まっていたことや、昭和20(1945)年3月10日の「東京大空襲」でも南の夜空が真っ赤に染まっていたことを聞いたことがあります。

関東大震災では、火災による死者が多かったことが知られています。中でも、両国橋駅付近の「陸軍被服廠跡(りくぐんひふくしょうあと)」における被害は甚大で、死者・行方不明者あわせて約10万5千人のうち3万8千人余がここで犠牲になっています。現在は両国国技館・江戸東京博物館の北約300mに東京都慰霊堂がありますが、当時、ここは公園用地として造成され、空き地となっていたところに多くの人が避難し、火災旋風(せんぷう)(竜巻のような巨大な炎の渦)により被災したことが記録されています。同様に、火の手を免れた上野の山と上野駅にもおよそ50万人が避難したことが記録に残されています。しかし、9月2日午後5時30分~7時頃には、明治18(1885)年に竣工したレンガ造りの上野駅も完全に焼失してしまいます。
鉄道省編『関東大震災・国有鉄道震災日誌』からは、東北本線(上野-川口間、栗橋-古河間、上野-秋葉原貨物線)を含め1,836両の列車被害や、荒川にかかる橋梁などの被害を読み取ることができます。列車や駅などの被害記録の中でも甚大だったのは、神奈川県(現在の小田原市)根府川駅の熱海線(現在の東海道本線)でした。真鶴(まなづる)行列車がホームに入線しかけたところ、地震が発生。地滑りによる土石流で、車両が駅舎やホームもろとも海に流され、死者・行方不明者112名、負傷者13名の犠牲がありました。
東日本大震災の時、東北新幹線や在来線は緊急停車し、死傷者がなかったのは不幸中の幸いでしたが、これはおよそ100年間で技術が大きく発達したことの恩恵と思われます。備えあれば憂いなし、です。

参考:国立研究開発法人防災科学技術研究所ホームページ「自然災害情報室」
【URL】https://dil.bosai.go.jp/

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