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市史編さんだより vol.31

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栃木県大田原市

■民俗部会調査速報(10)~木下ろし作業用のキゾリ(木橇)~
今回紹介する民具は、北滝の佐藤和吉氏(昭和4年生まれ)が八溝山地の南西麓で伐採した木材(主に松・桧・杉・桜など)を麓まで下ろすため、昭和40年頃まで使用していた運搬用のキゾリ(木橇)です。材質は樫(かし)の木で、長さ285cm、幅15cm、厚さ3cmほどの板を2本切り出し、その両端部を船の舳先(へさき)状に加工し、ソリの滑走部としています。この2本の板に、幅4.5cm、厚さ1.5cmのほぞ穴を左右対称に各4個ずつ開け、幅が4.5cm、厚さ3cmの角材の両端部を加工してはめ込み、楔(くさび)で固定して梯子(はしご)のような基本の形が作られています。さらに2対の穴を開け、鉄製の針金3本を撚(よ)り合わせて2本の滑走部を締め上げて固定しています。前後は同じ形に整形され、両端部近くに4か所の穴を開け、端部に金具の付いたキゾリを引くためのロープをかけて縛る、針金製の環が付けられています。このソリに、直径約15cmで長さが約3~3.6mの木材ならば10~15本積むことができます。木材は縄でソリに縛り付け鎹(かすがい)を打って固定し、木道を滑らせるようにして里に下ろしました。木道にはバンギとよばれる伐採した枝を傾斜に合わせて敷き、廃油を塗ってキゾリを滑りやすくしました。
木材に関する作業は分業で、伐採を行うモトヤマと搬出を行うキオロシの作業があります。伐採は春と秋の2回行われました。昭和30年代までは伐採した後、現地で皮を剝き乾燥させるのが一般的でしたが、材木の需要が高まった昭和40年代になると生木のまま運搬されるようになりました。
(民俗部会 上野修一)

※「佐藤和吉」の「吉」は環境依存文字のため、置き換えています。正式表記は本紙をご覧ください。

問合せ:文化振興課
【電話】0287-47-5031

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