病気などで人生の最期を迎える時、本当に過ごしたい場所はどこですか? すべての人にやってくる人生の最期。最期まで自分らしく暮らすための選択肢のひとつとして「在宅医療」があります。
在宅医療を選択することで、通院が難しくなったときに、医師の訪問による診察や治療のほか、連携した専門職によるサービスを受けながら、自宅などで病気の療養を行うことができます。
◆さまざまな専門職が連携して、在宅医療を提供します。
〇医師
日常的な治療や健康管理を行います
〇薬剤師
自宅に薬を届け、効果や飲み方のアドバイスや、副作用の確認をします
〇ケアマネジャー
本人や家族からの相談に応じ、必要なサービスや支援を提案します
〇ホームヘルパー
排泄(はいせつ)や食事介助などの身体介護と調理や洗濯といった生活援助を提供します
〇訪問看護
医療処置や健康状態の観察などを、医師と連携をとりながら行います
〇訪問リハビリ
症状や障がいを考慮しながら、リハビリ指導や環境整備の助言を行います
〇訪問入浴
自宅の浴槽に入るのが困難な方に、簡易な浴槽を持ち込み、入浴介護を行います
◆在宅で夫を看取ったT・Uさんの体験談
夫は59歳の時に、根本的な治療法が確立されていない、多系統萎縮症と診断されました。リハビリにも励みましたが、発病から6年後には寝たきりになり、話すことも難しくなりました。
病院に入院した際、夫はすでに話すことができない状態でしたが、涙を流して「家に帰りたい」と訴えました。もし自分が夫の立場でも、同じように住み慣れた家で季節の変化や家族を近くに感じて過ごしたいと思ったので、夫の希望をかなえることに決めました。
夫が病気を発症してから約10年間、自宅で療養しましたが、その間いろいろな方のサポートを受けました。夜中に体調が悪くなり、訪問看護師さんに来ていただいたこともありましたが、看護師さんは嫌な顔一つせず「何かあったら連絡ください」と優しく声をかけてくれましたし、医師はいつでも親身に対応してくれて、「ひとりじゃない」という安心感がありました。
夫が亡くなった令和2年はコロナ禍ということもあり、在宅医療を選択していたからこそ、夫は娘や孫など家族が見守る中で、本当に安らかな最期を迎えることができました。
在宅で療養しているときは、正直大変だと思うこともありましたが、家だからこそ得られた夫婦だけの時間がありました。今あの頃を振り返ると、不思議と良い思い出しかありません。
■日光市でも在宅医療を
~専門医から~
〇岡宗男(おかむねお)氏
岡医院医院長・上都賀地区医師会在宅療養推進委員会委員長
日光市は全国的にみても、在宅療養に関する医療機関ならびに訪問看護事業所の数が少なく、在宅医療が充実しているとは言いにくい地域であります。
私は平成26年に日光市へ戻り、一般外来のほかに、在宅医療に従事しておりますが、資源が少ない中でも、行政と協力して医療・介護連携を図り、地域住民の皆さんの在宅医療サービスのニーズに応えるべく、日夜がんばっています。
定期的に、在宅医療に関する講演会や多職種研修会、情報交換会などを開き、啓蒙活動も行っております。
今後も、引き続き必要なサービスをタイムリーに提供できるよう、関係者みんなで尽力してまいりたいと思います。ぜひ、多くの方々の療養にお役立ていただけたら幸いです。
問合せ:高齢福祉課 地域包括支援センター
【電話】0288-21-2137
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