文字サイズ
自治体の皆さまへ

大川市長と津森国交省所長がトップ対談「渡良瀬遊水地を賢く活用しよう」(3)

7/45

栃木県栃木市

流域治水 命を守る取り組みを総動員

栃木市は、関東・東北豪雨(2015年)、台風19号(2019年)と二度の水害に見舞われました。どうやって洪水被害を軽減し、逃げ遅れを出さない強靭な地域を構築するのか、国交省は「流域治水」を掲げています。

――あらためて、「流域治水」とはどんな治水対策ですか
津森:栃木市でも被害が大きかった関東・東北豪雨では、人間の力を超える自然の力によって氾濫は起こり得ることを認識し、令和元年台風19号では、気候変動下であらゆる関係者の取り組みが必要であることを認識しました。
そして、水災害対策も大きく転換しました。「流域治水」とは、「みんなで協力して取り組む治水、水防災」です。あらゆる場所で、あらゆる主体が、あらゆる取り組みをする(イラスト参照)。「自分ならどうするか」ということです。

■栃木市は地形がぴったり
――栃木市や遊水地一帯に当てはめると
大川:二度の水害で、どこか一カ所を治めるだけでは済まないと実感しました。その点、「流域治水」では栃木市の地形がぴったりだと思います。
上流の地域などで降った雨が川に流れ込み、街の中を通り、遊水地に入ります。そこで、上流では田んぼダムなどで降った雨を貯めて、徐々に下に流す。川は、堤防強化などの工事をする。街中での内水氾濫を防ぐために、各所に調節池を作る。遊水地では掘削などで貯留容量を少しでも増やしてもらう。西前原、石川の排水機場なども強化工事中です。
上流、中流、下流の全体で取り組めると自負しています。
津森:確かに、栃木市は山があり、中心市街地があり、でもすぐ海辺ではなくまた下流に受け渡していく構図。川という一つの線に限らず、面的な横の広がりの中で取り組むという、流域治水にぴったりの地域ですね。私たち河川管理者は、遊水地を強化し、堤防を築くなど河川の改修をしっかりと進めてまいります。
大川:国と県、市の役割が明確で、それぞれが行いつつ、連携が大事ですね。遊水地の洪水調節機能の強化は周辺4市2町が毎年、利根上さんに要望しています。

■自らの命を守る行動を
――避難支援などソフト面の充実は
津森:ハードとソフトの両方が重要ですね。みんなが各々に良いと思うことをやる、時には他主体の良い取り組みを真似てもいい。自分だったら何ができるかにトライすることが大事だと思います。
大川:災害時、私たちが最初にしなければならないのが、情報をいち早くキャッチして、避難行動のために早くお知らせすることです。空振りになっても、早めに市民の皆さんに避難してもらいたいと思います。
また、ハザードマップを新しく配布しました。市民の皆さまが、自分のタイムラインでどう避難するのか、決めてもらうことが重要と思います。
災害でも「自助・共助・公助」が言われますが、私は最近、最初が「公助」だと知りました。公助とは、まず市民の皆さんがどういう行動をしたらいいかを知ってもらうことなんですね。早めの避難とか、少しでも高いところに避難とか。自治体がその「公助」を、出前講座などを通して行うことで、いざというときに命を守ることができます。
津森:行政がまず、機会を作って市民に周知していくのは、「自助」が機能する下地作りをするということであり、重要だと思います。こうした関係性が、最後は一人ひとりが自らの判断で自らの命を守る行動をすることに繋がり、みんなで取り組む「流域治水」になりますね。
大川:市執行部が市民と対話する「ふれあいトーク」を市内で12回行い、流域治水も説明しました。田んぼダムなども含めて知ってもらう機会にしています。

■広がる企業との災害協定
――企業の役割が注目されています
津森:私が重要なプレイヤー、存在だと思っていますのが地域の企業です。企業と連携して関わりを強め、住民の避難場所の提供など、企業価値の向上とあわせて具体的に一歩前に進められれば、みんなで取り組む関係が深まりますね。
大川:栃木市もさまざまな企業と災害に関する協定を結ばせていただいています。避難所に使わせてもらう、台風19号では車の水没被害が多かったので車の避難場所を確保させてもらう、など内容は様々です。今年の台風2号で、市民から市に車の避難場所の問い合わせがあり、市からすぐに企業にお願いしました。
津森:素晴らしい取り組みですね。利根上も、企業が流域住民の命を守るこういう活動をしていますと、できるだけ「見える化」したいと思っています。「見える化」することで、住民自らの行動に結びつき、実効性が高まるでしょう。

■周辺の市町同士が助け合い
――利根上さんが広域避難に向けた災害情報を提供するなど、自治体同士の連携も深まっています
津森:人の命を守るには、最終的には避難していただくことにどう繋げるかです。最初のスイッチになるのが、私たちからの「河川の水位が今こんな状態です」、「この雨の降り方ですので避難をお考えいただきたい」などの情報です。情報を的確に伝えていきます。
次のスイッチとして、市が避難指示を出す、または市民が自ら自主的に避難行動に入っていく。二つのスイッチの作動で、広域避難、自主避難など、とにかく避難し命を守ることに繋がります。
大川:遊水地周辺の4市2町では連携を行っており、台風19号では、群馬県板倉町から栃木市に避難の要請があったと記憶しています。本市も、ゴミの受け入れ、職員の派遣などにおいて周辺自治体に助けていただきました。
遊水地を通して、この繋がりができたものと思います。これからも助け合える関係を大切にします。
津森:利根川と渡良瀬川などが合流する付近の自治体同士で以前から築かれている連携関係が、意思疎通や、住民が避難するときの支えになります。このエリアはすごく先駆的ですね。
大川:こうした自治体同士の連携に加え利根上さんとの連携が大切ですので、今後ともよろしくお願いいたします。(完)

▽みんなと取り組む流域治水
※イラストなど詳細は、本紙またはPDF版6~7ページをご覧ください。

▽市、住民などそれぞれに役割があります!
国:河川の河道を広げ、掘削するなど
県:
・巴波川…地下トンネル、遊水地を作る
・永野川…堤防を強化し、河道を掘削
栃木市:
・巴波川流域…放水路や調節池を作る
・永野川流域…調節池や排水施設を作る
・田んぼダムを増やす
・各家庭の止水板設置を補助
市民:
・ハザードマップを点検
・マイ・タイムラインで避難行動
企業:災害時の避難場所・物資の提供など市と幅広く連携・協定

*****************************
問合せ:渡良瀬遊水地課
【電話】62-0919

<この記事についてアンケートにご協力ください。>

〒107-0052 東京都港区赤坂2丁目9番11号 オリックス赤坂2丁目ビル

市区町村の広報紙をネットやスマホで マイ広報紙

MENU