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滋賀県草津市

■同和問題啓発強調月間によせて ~学校の教科書に関連する物語から~
小中学校で使われている文科省検定済教科書は、数年ごとに改訂されることを知っていますか。来年度は、小学校で使う教科書が新しくなります。この機会に、改めて教科書の体裁や内容に関して見直してみると、新たな発見があるかもしれません。

◇教科書無償化
今の教科書は、紙質も良くなり、写真も多くカラフルになっています。そして、内容も盛りだくさんになったように感じます。時代が進むにつれて、社会の変化や学問的に新しい発見があり、位置付けや視点も変わるので、学ぶ内容が変化するのは当然ともいえます。
ところで、教科書は義務教育において無償提供されていますが、初めからそうであったわけではなく、その過程には、多くの人々の努力がありました。差別や貧困のため、長期欠席や不就学が多かった高知県のある被差別部落で、昭和36(1961)年に起こった「教科書を無償にする運動」が、憲法26条「義務教育は無償とする」を具現化する運動へと発展して全国に広がり、昭和44(1969)年には、小中学校教科書の無償化が全学年で実現しました。すなわち、教科書の無償化は、部落解放運動の成果の一つであるといえます。

◇身分制度の起こりや確立に関する表記の変遷
小学校高学年や中学校の社会科では、身分制度の成立に関する内容を学びますが、教科書の表記は変わってきています。
ある年代以上の人は「士農工商」という四字熟語で身分制度を記憶していることが多いかと思います(図A参照)。この言葉は、語呂が良くて覚えやすいのですが、その後の歴史研究の結果、身分の上下や順序を示すものではなく「老若男女」と同様に「さまざまな人々」といった意味で使われていたようです。
この史実を受けて、その後の改訂では「上下関係」よりも「一部の人を排除する考え方」を中心にした解説で、身分制度を説明する流れに変わりました(図B参照)。同時に、室町時代以前から、人々の中に「ケガレ」と呼ばれる意識の芽生えと、それを支配者が利用してきたことにも触れています。
さらに最新版では、円グラフを用いて、身分ごとの人口の割合をパーセントで示しています。例えば、人口の84%が百姓(農民など)であることなどが、分かりやすい表記になっています。また、服装や交際などで厳しい制約を受けた人々も、農業や手工業などを営んで年貢を納め、優れた生活用品を作ったり、警護や芸能で活躍したりして、当時の社会や文化を支えたことを記しています。

◇今もなお身近にある差別をなくすこと
教科書無償化に関わる社会運動の成果から、あらゆる人々の権利保障と幸福をめざした先人たちの思いに共感します。また、教科書記述の変遷に関する経過から、歴史に関する科学的な検証を続ける意義が明らかになります。
このように、教科書に関する歴史をたどると興味深いのですが、さらに大切なことは、今もなお身近にある差別をなくすことです。私たちは「差別的な身分制度は、いつ、どのようにして作られたのか」ということを学びつつ、同時に「差別は、今を生きる私たちの関係性の中で起こっている現在の問題」として捉え、主体的になくしていくことを大切にすべきです。
もし仮に、差別が突然、誰かの号令で始まったのであれば、同様に廃止する命令を受けて消滅するはずですが、それほど単純ではありません。根強い差別意識や社会構造的な差別は、粘り強い努力によって克服する必要があり、社会の中にある不合理な差別をなくしていくためには、確かな学びと行動が大切です。
全戸配布しました「めざめ第46集」を活用し、人権研修会などを通して、自分には何ができるのか、何をすべきか、あらためて考える機会にしていただきたいと思います。

問合せ:人権センター(大路二、キラリエ草津3階)
【電話】563-1177
【FAX】563-7070

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