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自治体の皆さまへ

全国初「動くハザードマップ」3D都市モデルを活用し、災害の可視化へ

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熊本県玉名市

■全国の防災行政をリードする新たな防災ツールを、この玉名から発信
熊本県南を中心に甚大な被害をもたらした「令和2年7月豪雨」。多数の線状降水帯の発生と停滞、経験したことがないほどに降りやまない雨。九州全7県で河川が氾濫したほか、その豪雨被害は全国にまで及び大きな傷跡を残したことは記憶に新しいところです。
この未曾有(みぞう)の災害が発生した同年、国によるDX推進の流れに加え、国土交通省のプロジェクト「PLATEAU(プラトー)」が始動します。スマートシティなど、まちづくりのDX※1を進めるための技術基盤となる3D都市モデルの整備・活用・公開化を推進するこのプロジェクト。当時、本市では防災における河川の氾濫・浸水被害リスクが高い地域の対策をどう進めていくかを議論・検討している最中でした。その課題解決の方法として「PLATEAU」に注目。3D都市モデルを活用した「災害リスクの可視化モデル」と「3D浸水・避難シミュレーションモデル」の2モデルの構築を目指して、令和2年、本市はこのプロジェクト「PLATEAU」への参加を表明しました。
そして、ことし2月、これまでの一連のプロジェクトが完成し、この2モデルを遂に公開。うち、3Dを駆使した避難シミュレーションモデルは全国初となるものです。今回のプロジェクトにより、VR※2空間に3Dのリアルな玉名市の街並みを再現。その街並みを使って浸水・避難の模擬実験を行うことで、災害危険箇所の予測や避難誘導路の分析に役立てることが可能となりました。また、VR体験を通して市民に浸水被害を仮想体験してもらうことで、市民間における防災意識の向上・醸成も大いに期待されます。
近年は地球温暖化に伴う気候変動の影響により、豪雨の発生頻度は非常に高まっています。また、突発的なゲリラ豪雨も全国で頻発し、人々の生活基盤に深刻な被害を与える事例は毎年のように報告されています。激甚化する災害にどう向き合うか。全国初の3D避難シミュレーションを含むこの2つのモデルが、新たな防災ツールとして全国の防災行政をリードしていきます。
※1DX(デジタルトランスフォーメーション:デジタルによる変容)
※2VR(バーチャル・リアリティ:仮想現実

[3D都市モデルとは]:
都市空間に存在する建物や街路といったオブジェクト(物体・対象)に名称や用途、建築年といった都市活動情報を付与することで、都市空間そのものを再現する3D都市空間情報プラットフォームです。さまざまな都市空間活動データが3D都市モデルに統合され、フィジカル空間(実世界)とサイバー空間(仮想世界)の高度な融合が実現します。これにより、都市計画立案の高度化や、都市活動のシミュレーション、分析などを行うことが可能となります。

■[モデル1]災害リスクの可視化
このモデルは、想定し得る最大規模の降雨に対し、仮に堤防が決壊し水があふれ出した場合の浸水範囲や浸水深(地面から水面までの高さ)の変化をシミュレーションします。
玉名駅周辺が最大浸水深となる繁根木川破堤点を対象に模擬実験を実施。高精度の3D地形データを用いることで、盛土による浸水の回り込みといった現象も再現。VR空間上に災害リスクを可視化することにより「動くハザードマップ」として浸水範囲や水位の状況の変化を同時に表現することが可能となりました。
今後は、避難の重要性や災害リスクの理解を深め、防災教育効果を高めるとともに、案内版や対策案などをこの3DのVR空間上に付加することにより、最適な避難ルートや施設配置の検討といった防災計画でも活用を図っていきます。

□氾濫シミュレーション結果のリアルタイム表示
想定破堤箇所からの氾濫シミュレーション結果を時刻歴で表示し、災害リスクを分かり易く可視化します

□3D都市モデルと浸水シミュレーションの重層
3D都市モデルに重ね合わせ、案内板や対策案などを追加し、防災計画や避難経路設定に活用します。

■[モデル2]3D浸水・避難シミュレーション
このモデルは、上記の「災害リスクの可視化モデル」で作成された浸水シミュレーションを利用して、市民の防災意識の醸成と、マイ・タイムライン(住民一人一人の防災行動計画)の支援ツールとして活用を図るため、3D都市モデルを活用して既定の避難経路の検討・実証実験を行うVRアプリケーション(仮想体験プログラム)を開発。この3D避難シミュレーションは全国初の取り組みです。
実在する道路や建物を模したリアルな街並みの3Dバーチャル空間を作成。この空間を使って、360度のCG(コンピュータグラフィックス)ムービーを制作。避難シミュレーションの際、避難経路の分岐点で選んだ選択により水害を体験できるようになっています。

□VR浸水シミュレーション表示
VRゴーグルならではの臨場感を演出した浸水シミュレーションを表示。事前準備の大切さを体験者が実感できます。

□分岐選択ポイント表示
河川の方角や地盤の高低差など複雑な条件が重なる場所を分岐ポイント表示。選択の答え合わせがすぐに出ます。

■VR体験会を実施しました
今回の2つのモデルの開発に当たっては「防災講話での活用」という点も示しています。
2月7日、松木公民館で地元住民の皆さんを対象にVR体験会を開催。「繁根木川の堤防が松木付近で決壊した」と想定したシミュレーションを体験していただきました。体験後のアンケートでも、参加者からVRに対する有用性を感じるコメントを多数いただきました。

[参加者のコメント]:
・事前に避難を考える機会となった
・避難訓練が必要と感じた
・事前避難の重要性を理解した
・避難所収容人数が心配
・常日頃の避難場所を考える
・防災マップを見ておこうと意識した etc…

このように、各地で開催される防災講話などで活用していただくことで、参加者の皆さんの防災意識の向上を図ることが可能となります。また、今後の発展として、VRゴーグルがなくてもパソコンやスマートフォンアプリなどでも体験できるような「より使いやすい仕組み」にすることで、さらに利用者を増やし、広く市民全体の防災意識の向上につなげていくことが期待されます。

連絡/問い合わせ先:都市整備課
【電話】75-1122

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