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詩を楽しもう 清岳こう

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熊本県玉東町

清岳こう文庫からおすすめの詩人を紹介します

◆高良留美子
(5月号の続き)アダムの最初の妻・リリトは、アダムと対等に扱われることを要求しました。が、アダムと口論となり、紅海のほとりに移り、毎日百人の子供を生みます。天使たちの「逃げたままだと毎日子供たちのうち百人を殺す」という脅迫にも屈しません。そのため、神は、従順なイヴを作り出したとか。いわゆる、リリトの物語は母系制社会と父系制社会の興亡の歴史の残滓であるとしても、氏は「狂暴」であり、「従順」という単語を蹴っとばしてきた現代のリリトなのです。氏は、その評論においても、誰をも容赦しません。『女性・戦争・アジア―詩と会い、世界と出会う』(土曜美術社出版販売)にもそれは顕著です。「日本の文化は、互いの〔個〕の底を問いつめずに曖昧に流していく文化だった」互いの傷に触れないことを、〔思いやり〕とみなしてきたのだ。」と。とりわけ、現代の「アダム」たちには。少しでもその身体から、父神的フェロモンが出ていたり、きな臭い煙が上がっていたりすると、敏感な嗅覚の持ち主は「漆の枝」を振りまわすのです。へなちょこの私なんぞは、氏の嗅覚にひっかかる不運が巡りこないようにと祈るしかありません。(もう、ここで、何をぬかすか、戦え、と言われるのは必然です。)
正義感が強く、頭脳明晰(何しろ日本の大学を二校も卒業し、パリの大学まで学んでいる)、平和を、女性の権利を希求する情熱が氏を支えています。やわな抒情を排斥し、真っ向勝負の詩篇を世に送り出してきました。その活動範囲は広く、著作も膨大。私費を投じて女性文化賞を創設し、二十年間、研究者、国際的な活動家と、女性たちのさまざまな活動を顕彰してきました。さらに、「神々の詩(うた)」というテレビ番組で、毎週、「命の不思議とその尊さを」(帯文)発信した鮮烈な言葉も忘れられません。スケールの大きい、筋金入りの詩人です。

▽推薦詩篇
・『崖下の道』
・「土の力」『神々の歌』

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