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なぜ山に登るのか(2)

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熊本県阿蘇市

■なぜ山に登るのか 自分と向き合う時間を求めて
山や草原など未舗装路を走るトレイルランニング。近年盛り上がりを見せるこの競技で、阿蘇市出身の森本幸司さんが日本代表として世界大会に出場しました。
トップレベルのトレイルランナーである森本さんは、なぜ山を走るのでしょうか。

「自分でも、何が楽しくてこんなにきついことをしてるんだろうと思います」。トレイルランニングの魅力について質問すると森本さんは笑いながら答えました。「走っているときは『もう絶対しない』と思うけれど、走り終わってしばらくすると『もっと長い距離を』『もっと過酷な大会に』って考えてるんです」
トレイルランニングは山や森など自然の中を走る競技。岩場や急勾配、さらには天候の急激な変化など、過酷な環境で何十キロメートルも走り続けます。森本さんは、日本におけるトレイルランニングのトップランナーの一人。昨年に鹿児島県で行われた大会で優勝し、6月8日にオーストリアで開催された「マウンテンandトレイルランニング世界選手権」に日本代表として出場しました。

○山を走るようになったきっかけ
日本を代表する選手として活躍を続けてきた森本さん。もともとは駅伝やマラソンが専門でした。山を走るようになったきっかけは高校時代。当時、阿蘇清峰高校の陸上部に所属していた森本さんは、国民体育大会の山岳競技に出てみないかと誘われました。現在は実施されていませんが、当時は、山岳競技として荷重を背負って登山道を走るレースが実施されていました。この競技で森本さんは優勝。その才能を示しました。
その後は陸上競技に戻り、九州一周駅伝やマラソン大会などで活躍。再び転機が訪れたのは2013年でした。熊本県代表として出場してきた九州一周駅伝がこの年で終了。記録を求めて走ることに疲れを感じ始めていたこともあり、気分転換のためにトレイルランニングの大会に出場しました。森本さんはその魅力に改めて夢中になり、それ以降、走る舞台を山へと移していきます。

○阿蘇から世界へ、世界から阿蘇へ
日本、そして世界の山々を走ってきた森本さん。各地のフィールドを走り、阿蘇のすごさを改めて認識しました。「阿蘇の山を走る体験は唯一無二のものだと思います。外輪山から見下ろす田園風景も、草原の緑も、砂千里などの火山の風景も、その全てがすばらしいものです」。
大好きな阿蘇のフィールドのために何かできないか。森本さんは公務員を退職し、これまで国内外の大会に参加してきた経験を生かして、トレイルランニングイベントなどの企画・運営に加わるようになりました。
阿蘇で開催されるトレイルランニングのイベントでは、参加者が阿蘇に貢献できるような仕組みが取り入れられています。例えば、外輪山の約100キロメートルのコースを走る阿蘇ボルケーノトレイルでは、一般のエントリー枠に加え、古道や草原の整備活動への参加が可能になる枠が設けられたほか、参加料の一部は草原の維持・再生に取り組む団体に寄附されました。「阿蘇の景色や草原を楽しむだけではなく、その成り立ちや、地元の人たちの苦労も知ってほしい」

○トレイルランニングとは
森本さんは、トレイルランニングを「自分と向き合う時間」と表現します。「山では全て自己責任。この装備で大丈夫か、体調はどうか、体力は持つのか―。常に自分自身と向き合い続けなければなりません。自分と向き合い続けたその先に、達成感やきれいな景色が待っています」。世界の舞台で自分自身を見つめ続けてきたそのまなざしは、ふるさとである阿蘇にも向けられています。

◆今、トレイルランニングが熱い
ことし、阿蘇市ではさまざまなトレイルランニングの大会が開催され、多くの人が阿蘇の自然を満喫しました。

○2/4 マラソン+ピクニック=? 阿蘇草原マラニック
食や自然を楽しみながら走るピクニックのようなイベント。県内外から171人が参加し、阿蘇草原保全活動センターと国造神社を往復する28キロメートルのコースを駆け抜けた。参加者は、それぞれのペースで自然を楽しみ、写真を撮ったりしていた。福岡市から参加した男性は「眺めが最高で気持ちよく走れた」と話した。

○4/15 先輩たちが通った道に思い馳せ 阿蘇トレイル女学院
女性限定のトレイルランニング大会。県内外から157人が参加し、坂梨の熊本NOK株式会社をスタート・ゴールとする約15キロメートルのコースを走った。コースの一部は、明治~昭和時代に宮地の女学校への通学路として使用していた。参加者は当時の学生に思いを馳せながら、それぞれのペースで駆け抜けた。

○5/13-14 カルデラを走り尽くす ASO VOLCANO TRAIL
阿蘇地域で最大規模の大会。ASO MILKFACTORYから南阿蘇村のアスペクタまで、約110キロメートルを走る。411人がエントリーし、131人が完走した。古道や草原の整備活動へも参加できるエントリー枠も設けられ、阿蘇の成り立ちにも触れた。

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