アジアを中心に国内外のドラマ・映画制作者らが集う国際会議「アジアテレビドラマカンファレンス」を12月3日から5日までの3日間にかけて開催しました。八つの国と地域から300人を超えるドラマ制作者らが参加し、討論会やセミナー、ビジネスマッチングなどが行われました。
同会議は、アジア各国のドラマ産業への貢献を目的に、平成18年から韓国を中心に開催。各国の文化交流と共に、製作者や脚本家らによる意見交換、ビジネスマッチングが行われています。
市では、2月の前回会議に続き2度目の開催で、開会あいさつを行った茶谷市長は「前回に引き続いての開催はすごいこと。七尾の魅力が広がって、多くの人が足を運ぶことを期待しています」と話しました。
初日は市民参加イベントとして、実写映画「君は放課後インソムニア」の上映会や同作の監督を務めた池田千尋さんと「等伯」で直木賞を受賞した作家の安部龍太郎さんらによるトークセッションが催されたほか、「能登の魅力と祭り」をテーマに、大地主(おおとこぬし)神社宮司の大森重宜さんの講演が行われました。
2日目は、若手クリエイターによる発表や「アジアコンテンツの未来」をテーマに対談が行われました。
対談で登壇した日本の演出家、脚本家の源孝志さんは、海外展開の手法の一つである「リメイク」に触れ「地域性を一つの魅力として取り入れていくと、もっと素敵なコンテンツが生まれるのではないか」と提言。韓国、中国の登壇者からは、国境を越えた作品製作の課題や多くの人の共感を呼ぶ作品づくりへの私見などが語られ、これからのコンテンツ産業への強い思いに、参加者は熱心に耳を傾けていました。
3日目はロケ誘致に向けて、能登や金沢を巡るツアーが行われ、参加者は景色や町並みなどを確認。市内では七尾城山展望台や小丸山城址公園、山の寺寺院群などを訪れました。
■市民イベントトークセッション
映画監督 池田千尋さん×直木賞作家 安部龍太郎さん
▽逆境をエネルギーにする生きざまを書く
トークセッションには、池田さんと安部さん、司会として七尾高等学校出身で日本大学芸術学部教授の中町綾子さんが登壇。七尾に訪れたのは映画の撮影以来という池田さんは「すごく懐かしい」と話すと、当時を振り返りながら「七尾の町の人たちは、外から来た私たちをとてもやさしく受け入れてくれた」と感謝しました。
安部さんの作品「等伯」の話題では「等伯の人間味に共感した。押さえつけられるように生きていた等伯が都を目指すところが、『君ソム』の主人公の姿に重なった」と話す池田さん。作者の安部さんは「小説家も画家も、自身の駄目なところと向き合うことで力を得ている。等伯は次々と不幸な目にも遭うが、それをエネルギーにして松林図屏風にたどり着く。そんな生きざまが書きたかった」と力を込めました。
▽国際会議を再発見のきっかけに
地方で映像コンテンツを製作する魅力を問われると、池田さんは「この土地で初めて見る景色をたくさん見つけさせてもらった」と七尾での経験を基に「生活している皆さんと共存しながら作品を作ることができれば、日本の埋もれている景色や人を、映画やドラマにもっと映すことができるのではないか」と映像製作のあり方に一石を投じ、安部さんは「地元には先人たちの知恵がいくつも埋まっている。それを再発見して一般化してくことのきっかけになるのが、この国際会議ではないか」と期待しました。
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