【特集】スポーツ いいね!(8)

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【人の魅力が現れる】

体を動かして汗を流す、仲間をつくる、選手に声援を送る。皆さんがスポーツに引かれる理由は何ですか。特集の最後に、トップアスリートとして、指導者として、そして駆けっこが大好きな一人の人間として、自由に自分の道を走り続ける末續慎吾選手に魅力を聞きました。

■末續　慎吾(すえつぐ　しんご)さん
プロ陸上選手
世界陸上パリ大会200メートル銅メダリスト
200メートル日本記録保持者

プロフィル：1980年生まれ、熊本県出身。2003年に200メートル20秒03の日本記録を樹立。同年の世界陸上で日本人初の銅メダル、08年の北京五輪では4×100メートルリレーで銀メダル。現在は現役選手として競技会に出場しながら平塚市を拠点に自身のチームEAGLERUN(イーグルラン)(【HP】https://eaglerun.jp/)を設立。コーチング、ERC(下写真)、企業・学校での講演、メディア出演など多岐にわたり活動。
※写真は本紙をご覧ください。

▽荻野運動公園にもよく練習に来られると聞きました
自宅から車で40分程度と近いので、2年ほど前から利用しています。大きなスタンドがある競技場と違って、自然に囲まれていて酸素が多い感じがして気持ちいいです。一人で来ることが多くて、練習の合間には、芝生で寝転んでリラックスしています。競技場の外の坂道もトレーニングに使っています。

▽今目指しているものは
100歳まで走り続けて、これから年代別の日本記録を全部更新したいです。僕がこれから100メートルで9秒台を出したり、日本代表になったりしたら面白くないですか。今年43歳になりましたが、年齢で不可能になることはないと思っています。

▽走り続ける原動力は
やっぱり走ること、駆けっこが好きだから。生活の一部ですね。

▽走り始めたきっかけは
皆さんと一緒で運動会などでは走っていましたが、本格的に走り始めたのは小学5年生の時に地元の陸上クラブに入ってからです。僕は人と話すのが苦手で、走ることが他者とつながる手段でした。そんなに速くはなかったんですが、走ることで僕のことを覚えてもらえて、たくさんの人と出会い、世界が広がっていきました。

▽高校・大学・社会人と記録を伸ばして日本一になり、世界でも活躍されました
10代、特に20代の頃は、自分の持っているものを世界にぶつけて挑戦する時期でした。いい記録や結果を出して、たくさんの人に期待してもらいました。速く走って期待に応えるのが自分自身の存在意義だと思っていましたし、実際それに応えてきたと思っています。でも、ぎりぎりのところでやった結果、気付いたときには、体も心も限界を迎えていました。

▽北京五輪で銀メダルを獲得した後、3年間ほど走ることから離れていた時期がありました
生活もままならない状態でしたが、足は競技場に向かい、でも『無理だ』と引き返すことの繰り返しでした。それでも、走るのを辞める理由はありませんでした。そんな中で、速さと結果だけを求めるのがアスリートの幸せではないと思うようになりました。走ることで夢を与えたいとか、世界を平和にしたいとか大それたことじゃなくて、まだやれるからやる、走りたいから走ると、自由でシンプルな考えに行き着きました。

▽今はイーグルランを立ち上げ、コーチングなどもされています
走ることの自由を表現し、その思いを広めるために立ち上げました。競技者のコーチングや、幅広い年代の教室、講演などをしています。高校時代の恩師は長距離が専門で、僕を学校に誘うときに「短距離はよく分からないけれど、一緒に陸上をやりたい。先生も勉強する」と言ってくれました。その言葉で進学先を決めました。入学してからも、自分の考えばかりを話さないで、僕たちの話をよく聞いてくれました。その関係性がベースになっています。選手が自分で考えて何かを見つけられるよう、個々をよく見て助言したり走る姿を見せたりしています。僕が教わることもあります。

▽走り続けて良かったことは
これで良かったんだと、今がいいと自分自身で思えることです。

▽末續選手が思うスポーツの魅力は
「人」です。記録や勝敗だけがスポーツの魅力や価値ではありません。結果だけ見るんだったら、ロボットが競ったっていい。いろんな境遇や経験を重ねた人が関わり、人間の姿を見せられるところがスポーツの魅力ではないでしょうか。人を見てほしいし、自分自身も良いところ、ダメなところ含めてさらけ出していきたいですね。

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