博物館の学芸員が、あれこれを語り倒すコーナー。
■秋葉信仰の主役・三尺坊の正体は?
大野 一郎
企画展「火の用心」では、たくさんの掛け軸、守札を飾っています。その主役は秋葉山の主尊・三尺坊大権現(さんじゃくぼうだいごんげん)ですが、姿は一様ではありません。
「秋葉山縁起」によれば、三尺坊とは、信州(長野県)出身、越後蔵王堂三尺坊の主でした。飛行自在の神通(じんつう)を得た修験者で、これを信仰すれば、戦や出火類焼など13の難を逃れられ、加えて子授けのご利益もあります。姿は迦楼羅身(ガルーダ)を思わせる烏天狗(からすてんぐ)で、不動明王や飯綱(いづな)、陀祇尼天(だきにてん)という人もいます。白狐に乗った烏天狗として描かれることが多い三尺坊ですが、金毘羅(こんぴら)とセットの時は、鼻高天狗(はなだかてんぐ)となり、それは江戸時代の高僧・白隠(はくいん)禅師の影響とされます。明確な姿のない金毘羅に烏天狗を譲り、自らは鼻高天狗になったわけです。
厚木にも三尺坊はいらっしゃいます。興福寺(恩名)には烏天狗の三尺坊像が、大厳寺(愛甲)には鼻高天狗の面がまつられています。皆さんの地元の三尺坊はどんなお姿ですか?
問合せ:あつぎ郷土博物館
【電話】225-2515
<この記事についてアンケートにご協力ください。>