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[特集]六つの点で伝える世界(1)

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神奈川県平塚市

広報ひらつか点字版が、7月第3金曜日号で1000号を迎えました。今号では、広報ひらつか点字版の製作現場や、市内にある平塚盲学校の点字学習などを紹介します。

◆点字を読む人
「いのちをまもるきゅうきゅうたい…」。奥に座っている視覚障がいのある方が、広報ひらつか5月第3金曜日号の表紙を声に出してすらすらと読み上げます。点訳された原稿データを点字に変換するブレイルメモという機械で、広報ひらつか点字版の校正作業をしています。
※詳細は本紙P1参照

◆広報ひらつか点字版が出来るまで
広報ひらつかは、広報課の職員が発行日の1週間前に、印刷をする新聞社で最終校正をします。校正が終わった原稿が神奈川ワークショップに届いたら、広報ひらつか点字版の製作開始です。点訳の担当者が自宅で原稿を作り、神奈川ワークショップに原稿データを持込み、1面の作業に続きます。
1.ブレイルメモ(本紙P1奥の機械)に浮かび上がった点字を指で読む
2.(本紙P2左の)パソコンに点訳データが表示される。校正作業は2回。それぞれ約5時間かかる
3.刷る準備のために版出しをする。点字のデータがパソコンに送られる
4.ブレイルシャトルという機械で版が印刷される
5.視覚障がいのある担当者が指で素読み(じっくり原稿だけを読む校正)をする
6.素読みで問題がなければ印刷開始
7.ページを整えた後、ホチキス留めをし完成
※詳細は本紙P1~2参照

◇幅広く点訳の書籍を作る
広報ひらつかには、内容を点訳した『点字版』と、音訳した『声の広報』があります。点字版に対して、視覚を使って読む広報ひらつかを、『墨字(すみじ)版』と呼び区別しています。
広報ひらつかの点字版は、一般企業での就職が難しい方に働く場を提供する、就労移行支援・就労継続支援の福祉事業所「光友会」の神奈川ワークショップ(藤沢市獺郷(おそごう)1008-1)が作っています。
昭和56年4月に設立され、視覚障がいのない晴眼者(せいがんしゃ)の職員5人と、視覚障がいのある利用者5人が働いています。視覚障がいのある5人は、いずれも点字に関わる専門的な知識と技術を持っています。その能力を生かし、主に校正・素読み・印刷などの作業を担当しています。県内の広報紙の点訳の他にも、プライベート点訳と呼ばれる単発の点訳もしています。名刺やテレビ番組のリーフレット、能の公演のあらすじの点訳版などを作ることもあります。

◇墨字版に忠実に作る
広報ひらつか点字版の令和5年5月第3金曜日号で、校正作業を担当した中山訓史(さとし)さん。「視覚障がいのある人に、できるだけ多くの情報を届けたい、という気持ちで広報ひらつか点字版を作っています。墨字版に忠実に、内容を漏らさず掲載するのが点字版の大原則です」と、強調します。「例えば、広報ひらつかは文字だけでなく、表や写真などがたくさん使われています。点字表記のルールに基づいて点訳しますが、単純に点訳しただけでは、読み手にとって内容が分かりにくい場合もあります。晴眼者の職員が点訳したものを、視覚障がいのある私たちが校正することで、より分かりやすい点字版を作ることができます」。

◇晴眼者が気付かない部分も丁寧に
素読みの作業を担当した門脇俊輔さんは、「点字は手で触れて読むものなので、凹凸が弱いところがないかを意識して校正しています。曲がって印刷されていないか、はみ出ていないか、文字が切れかかっていないか、なども慎重にチェックします」と説明します。
触覚に頼るものなので、行間が狭くないか、点と点の間のマスが重なっていないかなどにも、注意が必要です。印刷を担当した赤間俊明さんは「刷り始めはもちろん、10部刷るごとにチェックをし、印刷が切れたりはみ出したりしていないかを入念に確認します」と言います。職員の奈良橋裕美さん(写真(7))は「われわれ晴眼者の職員が目で見ただけでは、内容が分かりにくい箇所や細かい印刷のずれなどに気付くのは難しいんです。利用者さんが細かくチェックをしてくれないと、成り立たない部分が多いですね」と話します。

◇知ることで理解につながる
点字版と墨字版との、大きな違いはページ数です。読みやすい点字版を作るには、ある程度、行間や一つ一つの点字の大きさが必要です。そのため、タブロイド判8ページの広報ひらつかを点字版にすると、平均で変形B5判80ページ40枚ほどになります。また、点字版にははじめに目次が付いていて、目次から内容を読み取り、欲しい情報があるページにたどり着けます。音訳版と比べたときの点字版のメリットは、電車の中でも暗い部屋の中でも、いつでもどこでも読めること。すぐ読み返せるのも特徴です。
社会のバリアフリー化が進み、街中に点字の案内も増えました。昔に比べ、手を貸してくれる方や声を掛けてくれる方も増えた、と利用者の皆さん。障がいがある人が街に出掛けやすくなったことを、実感しているそうです。
中山さんは「視覚障がい者でスマホを活用する人も増え、随分便利になりました。しかし、機械だけでは補えないものもあります」と力を込めます。「他人に手を貸し助け合うことができる……人の力というのは強いものです。われわれもできることとできないことを伝え、視覚障がいを知ってもらう必要があります。お互いに分かり合うことが、障がいへの理解につながるのではないかと思います」。

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