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[特集]関東大震災、その時。(1)

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神奈川県平塚市

大正12年(1923年)9月1日の大正関東地震によって引き起こされた、関東大震災。全国で約10万5,000 人以上が死亡・行方不明になるなど、大きな被害をもたらしました。地震の発生した9月1日が「防災の日」と定められたように、近代日本が災害対策を考える契機となった地震です。
今年は地震の発生から100 年目。市博物館の学芸員が、地学・歴史・民俗の観点から、震災当時の平塚をひもときます。

◆平塚周辺の地形は特異
-いきなりぐらっときて、これは大きな地震だなと思ったら、そばにあった大きな砂利の山が波打ってるようなんです。で、気が付いてみたら、鉄橋がぼーんと落ちちゃったんですよ。あれにはびっくりしました。(相模川近くの畑にいた島津庄作さんの談。博物館の聞き取り調査記録より)

相模川で橋脚が崩れるなど、大きな被害をもたらした大正関東地震。野崎篤学芸員に、平塚周辺の地質の特徴を聞きました。

◇3つのプレートが沈み込み合う場所
地球の表面は十数枚のプレートで覆われて、動き続けています。陸のプレートの下には海のプレートが沈み込み、陸と海のプレートの境目には、海溝やトラフ(海溝よりも浅く幅が広い溝)ができます。平塚市がある本州の陸の部分にあたる北米プレートの下には、フィリピン海プレートと太平洋プレートが沈み込んでいます。
北米プレートの下にフィリピン海プレートが沈み込んでいる境界には、「相模トラフ」と呼ばれるトラフがあります。大正関東地震は相模トラフで起こったとされる地震で、再来周期は約200年~400年と見られています。この地震で相模湾沿岸では、大磯丘陵周辺や三浦半島南部が1メートル以上も隆起しました。

◇相模湾沿岸の隆起速度は世界有数
平塚市のある南関東は3つのプレートの境界にあることから、日本の中でも最も地殻変動が激しい地域です。特に相模湾沿岸の一部は地面の隆起速度が世界有数で、例えば二宮町南部では縄文時代以降、1000年で約3メートル隆起しています。
もう一つ、平塚周辺で特徴的なのが、伊豆半島のあるフィリピン海プレートの動きです。1年で3〜5センチメートルの速さで北西に動いて、本州のある北米プレートの下に沈み込みながら、南関東に強い力を加え続けています。この力により、国府津︱松田断層をはじめとした多くの活断層が周辺地域に生じています。地震は主にプレートの動きによって起こりますが、活断層も地震を引き起こします。平塚市周辺では大磯丘陵を中心に、多くの活断層が見つかっています。

◇山・川・海が作った平塚の地形
大正関東地震では、液状化の被害が記録されています。こうした地震の被害には、「足元の地面がいつどんな風にできたか、何からできているのか」が大きく関わります。
被害の一つである地割れは、固い岩盤の上でも弱い軟弱地盤でも、どこでも起こり得ます。液状化は軟弱地盤が厚いところで起こりやすく、地すべり被害は谷底平野と台地・丘陵の縁で特に注意が必要です。
平塚市の地形を見ると、小高い地形と平坦な地形の二種類に分けられます。小高い地形としては「丘陵・台地」が、平坦な地形としては「平野」があります。丘陵・台地は基本的に軟弱地盤が薄いですが、谷戸の中の平坦地である、谷底平野は例外的です。新しい時代の細かい堆積物が厚く、軟弱地盤も厚いので、液状化に注意が必要です。平野は主に川が作った地形と、海が作った地形に分けられます。川が作った地形はさらに、旧河道・自然堤防・後背湿地に分けられます。比較的軟弱地盤が厚く、液状化する可能性が考えられます。大正関東地震では、古花水橋付近などで地割れと液状化が起こりました。海が作った地形はさらに砂堆と堤間凹地(おうち)に分けられますが、いずれも軟弱地盤が薄い地形です。
液状化が起こりやすいと言うのは、あくまでも自然状態での話です。地盤改良を行った場合、液状化による建物被害の度合いなどは変わってきます。地図上の情報だけを捉えていたずらに怖がるのではなく、過去の被害を学んで注意を払うことが大切です。

◆大正関東地震と平塚の地盤
大正関東地震の被害の様子や、平塚周辺の地盤の成り立ち、災害のリスクを紹介します。
日時:8月31日(木)〜10月15日(日)
場所:博物館1階寄贈品コーナー

◆倒壊被害が多発した平塚町
(1)現在の崇善小学校の前身で、見附台公園の位置にあった平塚尋常高等小学校。校舎は全壊したが、左に写る全国殖産博覧会の褒章授与式会場は原形をとどめている
(2)現在の湘南スターモールと八幡大門通りの交差点東にあった、いとう呉服店。写真左奥に看板が見える
(3)湘南スターモール北側にあった上総屋製麺所から、四つ角を望む
(4)八幡大門通りを南から見たところ。全国殖産博覧会を祝うアーチが奥に見える
※詳細は本紙をご覧ください。

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