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個性が光る絵本 平塚の作家たち(2)

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神奈川県平塚市

◆伊藤文人(いとう ふみと)さん
藤沢市出身、平塚市在住。グラフィックデザイナー・イラストレーター・トリックアーティスト。逆さ絵と回文を組み合わせた『まさかさかさま』シリーズや回文絵本『キリンねるねんりき』他著書多数。

◇ひっくりかえる面白さ!伊藤さんの逆さの世界
ひっくり返すと別の絵が現れる「逆さ絵」。どちらから読んでも同じ文章になる「回文」。上下・前後・左右の感覚を飛び越える「だまし絵」。伊藤文人さんは、絵や文字で世界を逆さにしてしまう達人です。
「世にある逆さ絵は、お化けだったり鬼だったり、暗いものが多いんですよ。回文も、文学的で肩肘張った作品が好まれる。でもぼくは、みんなが大笑いするタイプをやりたいんです」と、笑顔で話す伊藤さん。伊藤さんが生み出す「逆さ」の世界を紹介します。

・描いて描いて60年
藤沢市で生まれ、これまで東京都内や鎌倉市に住んできた伊藤さん。平塚市には10年前に引っ越してきました。「県立平塚江南高校に通っていたので、平塚には多くの友人がいます。平塚は地面も空も開けていて気持ちが良いし、優しい人が多いですよね。湘南の雰囲気を感じられる、好きな土地です」と、語ります。
伊藤さんは中学生のときから似顔絵や漫画を描き始め、高校在学中は、似顔絵のうまさが校内で評判になっていたそう。高校卒業後は、日本初のデザイン学校・桑沢デザイン研究所へ。その後リクルートに入社し、グラフィックデザイナーとして、年間200社弱に作品を提供してきました。
「当時は今のようにデジタル化されていませんから、イラストを描くのはもちろん手書きです。文字だってデジタルでなく、文字のネガを印刷する『写植』の時代でした」と、伊藤さんは振り返ります。作品作りにパソコンを使うようになった今でも、下絵は手書きで描いているそうです。
リクルート退社後は、数々のコンクールやコンペに入賞。絵本や美術書の他、テレビ番組にも作品を提供してきました。そんな伊藤さんがひそかに挑戦中なのは、全日本交通安全協会主催の「交通安全ポスターデザイン」で、最多受賞記録を更新すること。「内閣総理大臣賞に限れば、これまで通算6回受賞しています。入賞しやすい作品を描くコツはあるんですが、ライバルを増やしたくないから、あんまり教えたくないですね」と、にやり。

・上下左右、完璧に
人間の脳は、三つの点が逆三角形の位置に配置されると顔に見える、といわれています。「だから顔だけの逆さ絵を描くのは簡単なんですよ」と伊藤さん。しかし、体や小物、背景まで含めて、逆さから見ても違和感がない絵を描ける人はなかなかいない、と自負します。「例えばひっくり返して手の向きがおかしくなったり、意味のない建物が残ったりしていると面白くない。おかしな部分がない絵に仕上げるのはこだわりですね」。
伊藤さんのだまし絵は、見間違いから生まれることもあります。平成7年(1995年)に、全国トリックアートコンペで優秀賞を受賞した伊藤さん。作品の構想を思いついたのは、なんとトイレの中だったそう。「床のタイルの正方形が、ちょうど三つ重なる角度があったんですよ。そこを片目で見たら動いちゃった」。さすが、着眼点もユニークです。
伊藤さんの回文絵本や逆さ絵の絵本は、読み聞かせにも使われています。活躍する機会が多いのが、『まさかさかさま』だそう。「見開き1ページで完結するのでぱっと読めるし、七五調で読みやすい。困ったときは『まさかさかさま』が役立つ、と小学校の先生から聞いています」と笑います。皆さんも、伊藤さんの逆さの世界を楽しんでみませんか。

◇この世の3文字を、すべて逆さにし尽くした
という伊藤さん。回文は「一日100本は作れる」と胸を張ります。回文作りのコツを教えてもらいました。
例えば「きつね」でやってみましょう。

(1)一番後ろの文字、「ね」を真ん中に、対称になるよう後ろに文字を足します。
きつねつき(キツネ月)

(2)今度は一番前の「き」を中心に、同じように文字を足します。
ねつきつね(熱キツネ)

(3)今回は(2)の前後に「か」を足して、回文にしてみましょう。
かねつきつねか(加熱キツネか)

(4)もう少し長く面白くしたいですね。真ん中の「き」の隣に1マス増やして、接続詞の「の」を入れます。
かねつきのきつねか

(5)最初の(1)も面白いので入れてみましょう。
かねつきのきつねつきのきつねか

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