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開園から30年 名勝 養浩館庭園(1)

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福井県福井市

JR福井駅から徒歩15分。福井のまちなか観光のシンボルとなっている国指定の名勝養浩館庭園。福井市の中心市街地に静かにたたずむこの庭園は、アメリカの日本庭園専門誌でも毎年上位に輝くなど、国内外問わず高い評価を受け続けています。
今号では、長い歴史の中で一度は空襲で焼失しつつも、復元や一般公開を経て、今もなおさまざまな人たちに愛され続けている養浩館庭園の魅力を、それを支え続けている市民の皆さんの活動とともに紹介します。

■1 福井藩主松平家の別邸として建立
養浩館庭園の始まりは、江戸時代までさかのぼります。福井藩主松平家の別邸として造られたこの庭園は、園池が大規模であったことから「御泉水屋敷」と呼ばれました。明治維新により、福井城は政府のものとなりましたが、御泉水屋敷は松平家の所有地として、迎賓館などとして使われました。
「養浩館」という名は、明治17年、松平春嶽によって付けられ、「大らかな心持ちを育てる」ことを意味する孟子の言葉「浩然(こうぜん)の気を養う」に由来すると言われています。大正2年には、皇族をはじめ、元首相の大隈重信夫妻をもてなすなど、昭和初期まで松平家の休養や迎賓館などの場として使われ続けました。

■2 建物と庭園との一体性学術的にも高い評価
養浩館庭園の建物は、書院造りに茶室の建築手法を取り入れた「数寄屋造(すきやづく)り」の構造をしています。また、建物と庭園が一体の造りとなっており、水との親和性が高い回遊式林泉庭園として、早くから学術的に高い評価を受けていました。
庭園の随所に、足羽山の笏谷石(しやくだにいし)や、越前海岸の柱状節理の岩柱など、地域の名石が用いられていることも高く評価されるゆえんです。

■3 空襲で焼失するも名勝指定を経て復元へ
昭和20年、福井空襲により建物や樹木は焼失してしまいますが、庭園の池や築山、石組などの最重要部分は失われず、昭和57年には「良く旧態を残した優秀な庭園である」として国の名勝に指定されました。
これを機に、文政6(1823)年に出された現存最古の平面図史料『御泉水指図』をもとに復元整備が進められ、約8年の年月を経て、平成5年に一般公開が実現しました。
『御泉水指図』の区域は、現御泉水公園までを含むものでしたが、最大の敷地面積を誇った宝永5(1708)年ごろは、現郷土歴史博物館までを含む一帯が、「新御泉水屋敷」として存在していました。

▽column1 名勝って?
名勝とは、美しい景色や風景など、我が国の優れた国土美としてふさわしい場所の総称です。名勝は、山岳や海浜など自然そのままの景色と、庭園や公園など人が作り上げた景色の二つに分けられます。
芸術上や鑑賞上価値が高く、風致景観として優秀であったり、名所的・学術的に価値の高い文化的景観などは名勝として指定されます。

■4 身近にある大名庭園地域で守り継がれる
復元、一般公開から30年が経つ現在、養浩館庭園は、国指定の名勝でありながら、市民が憩う身近な庭園として活用されています。
近年では、地元の小中学生による利用が増えています。学校教育の一環で、学芸員の解説をもとにした鑑賞会や、グループでの体験学習を通じ、地域文化の振興・継承を図る動きも生まれており、地域に根付き、開かれた庭園として活用されています。
また、季節に応じてさまざまな姿を見せる養浩館庭園では、1年を通して四季折々のイベントが催されています。春のお茶席やお香の会、ライトアップ、夏に開かれる茶会、美しい紅葉が水面に浮かび上がる秋のライトアップや庭カフェ、コンサートなど、福井の四季を味わいながら楽しむことができるのも、養浩館庭園ならではの魅力です。
そんな養浩館庭園の魅力の裏には、庭園内の落ち葉などの清掃や除草、観光客や来園者への歴史ガイドなどの活動を通じて、養浩館庭園の美しい景観を守り抜き、魅力を発信し続けている市民団体やボランティアグループなどの地道な活動があります。
次のページでは、養浩館庭園の景観の維持や保全、魅力発信などに尽力する人たちの活動とその思いに迫ります。

▽column2 焼失から復元までの軌跡
昭和20年の焼失から5年が経った昭和25年、養浩館跡地には県立図書館が建てられました。昭和33年には、県立の美術館も開館します。昭和52年に、市はこの地を都市公園として整備する計画を発表しますが、昭和57年に名勝に指定されたことを受けて、昭和60年から発掘調査や史料調査を行い、庭園の修復と建物の復元を実施していきました。
復元前は築山の大部分が崩れていたり、園池には土砂が大量に堆積していたりと、復元には念入りな整備計画が必要でした。

▽養浩館庭園の魅力をフルカラーでご覧ください!
春夏秋冬、季節ごとに魅力的な風景が広がる養浩館庭園を写真でお楽しみください。
御座ノ間の天井の反射光や、御月見ノ間の窓からのぞく芸術的な池の風景など、魅力あふれる映像をお楽しみください。
来園者をもてなすため、養浩館庭園の床の間に10年間花を生け続けた華道家姉崎素心さんを、映像で紹介しています。

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