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自治体の皆さまへ

こがんひとこがんとこ Vol.56

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福岡県古賀市

◆カタツムリ
山下 悦子さん(NPO法人あじさい園理事長 社会福祉士 精神保健福祉士)
長男 隼世はやとさん(28歳)

20歳で西日本短大社会福祉コースを卒業し、養護学校のスクールバスの介助員を経験した。その時は自分が障がいがある子の親になるとは想像もしていなかった。

長男の隼世さんは、幼稚園の時から他の子と比べるとゆっくりめな子だったが、そこがかわいいとさえ思っていた。
小4で特別支援学級に入るまで「障がいがある」と指摘されても信じ難く、納得できずに立腹していた。親であれば皆そうではなかろうか、2歳から英語の歌や九九もCMも丸覚えできるこの子を「天才ではないか」とさえ思っていたのだから。
息子に障がいはない、ということを証明するため、彼女は猛烈に勉強を始めた。しかし識れば識るほど、皮肉にも知的障がいや自閉症の特性が息子の様子と違(たが)わず合致。「目の前の事実」と「認めたくない」葛藤で苦しんだ末、腹を決めた。
「愛する息子がどうすれば生きて行けるのか」を考えなければ。
大きな気がかりは、自分が居なくなったあとのこと。

障がいの特性から、7年間通った障がい者就労継続支援事業所への通所が難しくなった隼世さん。自信をなくした彼を慮(おもんぱか)り、引きこもり支援「あじさい園」設立の好機と捉え、自身も仕事を辞め2019年NPO法人を立ち上げた。
悦子さんは言う「隼世のためでもあったが、隼世がいてくれたおかげでがんばれた。自分が〝人や社会のためにできることをする〟ことで、将来息子が一人になった時、回り回って彼を守ってくれるいい出会いが訪れてほしい、と祈るような気持ちなんです」と。

涙と笑顔と皆さんの熱い思いのおかげで昨年秋、ついに念願の「のびのび」という活動拠点ができた。内職作業※や地域の方と交流をすることで、利用者さんが少しずつでも自信を取り戻すことができるように。またその家族の心の拠り所となれるように。

振り返ると、うまくいかないことが多い道のりだった。それでもほんの少しずつ進んできた。利用者さんのわずかな一歩が自分の一歩と重なって、日々心からうれしく愛おしく思う。この一歩でいいんだ。このままみんなで行こう。本当にカタツムリだけれど。

・あじさい園ホームページ
※QRコードは広報紙をご覧ください。

【※お仕事募集中】
作業内容や分量など気軽にお声がけください。試してみよう、部分的に依頼してみようという作業もOK。「障がいのある人ができる作業では?」と依頼してくださる事業者さんが増えることがありがたいのです。
*家族のことで悩んでいる方。遠慮なく電話をしていただき、「のびのび」へ見学に来てください。
【電話】080-4276-8349
(山下さん)

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