かつて、大野の町にアメリカがあった
■板付基地を掘る
今回は地下に眠る板付基地春日原住宅地区の痕跡について紹介します。令和3年の夏、JR大野城駅西口の目の前で発掘調査を行いました。この場所は、春日原住宅地区の一角に当たり、当時使われていた木製の鳥居型電柱が2基、残されていました。
調査を進めると、コンクリート製の配管や5mもの金属製タンクなど、住宅地区に関連するものが次々と顔を出しました。これらの役割を明らかにするため、当時の建物配置図と照らし合わせてみることに。するとタンクが見つかった場所は、ガソリンスタンドと書かれた建物にぴたりと一致しました。配管は当時の道路の下に埋められており、雨水や下水を流すためのものとみられます。
また、家族用住宅が立ち並んでいた場所では、細長い配管が見つかりました。これは、セントラルヒーティングと呼ばれる暖房システムに使われた配管だと分かりました。セントラルヒーティングは、ボイラーで発生させた蒸気が各部屋の配管をめぐることで暖をとる、欧米の一般的な暖房スタイルです。よく見ると、配管は断熱用のタールで覆われていました。
住宅地区の地下の姿はこれまでほとんど知られておらず、さまざまなインフラが整備されていたことが明らかになりました。
さて、冒頭に紹介した2基の鳥居型電柱のうち1基は、開発に伴い解体されてしまいました。住宅地区の面影は年々失われつつありますが、地下には当時の思い出がひっそりと眠っています。
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