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町の昔話コーナー

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福島県新地町

■豆名月(まめめいげつ)
昔々、福田に正直者の一家が住んでいたったど。
夫婦は朝早くから暗くなるまで一生懸命に働いて童を育てていたったと。
ほんでも、なんぼ働いても働いても、食うのがやっとだったと。ある年の春の事、働きすぎたんだべなぁ、おとっつぁま、ぽっくり亡くなってしまったど。気の毒に、残されたおっか様とちゃっこい童たち、最初のうちは「これから先なじょすっぺ。なじょしたらいいべ」って泣いてばかりいたったど。ほんでも食わなくてはなんねぇ。泣いてばかりいられねぇ。親子で一生懸命に力あわせて田畑を耕してやっと暮らしていだったと。おとっつぁまが元気でも食うや食わずの暮らし。そのおとっつぁまがいなくなったんだもの、ますます暮らしは苦しくなっていったと。田の仕事で精一杯で、畑までは手が回らなかったと。んだがら、秋になって豆名月になっても、供える小豆も大豆もなかったんだと。「お月様にお供えする豆がねぇなぁ。なじょしたらいいもんだべなぁ。」困ってしまったおっか様。お寺の和尚様に相談に行ったと。「和尚様、名月様にお供えする豆が無くて困っているんだげんども、なじょしたらいいもんだべなぁ。」すると和尚様、にこにこ笑って「何も心配することねぇ。お月様に豆供えたければ、他の家の畑に行ってもらって来お。」って教えてくっちゃど。「ほだって、黙って他人の畑から取ってきたら泥棒だべした。」「いや黙って取ってくるんではねぇ。苦労して作った畑の持ち主に『もらっていぐからない』って畑で一言、断ってからもらうんだぞ。それから、橋は渡ってなんねぇ。※1橋を渡んないで家さ帰って、名月様にお供えしろよ。」と教えてくっちゃど。
貧しくとも名月様を大切にする者と、そういう者に優しい福田の昔話だ。
※1 橋を渡ると隣りの地区になってしまうことから、「橋を渡らない範囲の人達にお願いするように」という和尚さんからの助言。

新地語ってみっ会では、語り部による昔話や紙芝居など毎月第3土曜日13時30分から二羽渡神社南、おがわ観海堂(小野俊雄宅離れ)にて参加費無料で、公開しています。興味のある方はぜひご参加ください。

問い合わせ:新地語ってみっ会
【電話】62-2441

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