○パネリスト:
浅野 透…森林研究・整備機構(森林機構) 理事長
長谷川 史彦…製品評価技術基盤機構(NITE) 理事長
川埜 亮…住宅金融支援機構(JHF) 理事
澤田 道隆…独立行政法人評価制度委員会 委員長
栗原 美津枝…独立行政法人評価制度委員会 委員
((株)価値総合研究所代表取締役会長)
清水 剛…独立行政法人評価制度委員会 専門委員
(アライン(株)代表取締役 CEO)
○モデレーター:
原田 久…独立行政法人評価制度委員会 委員長代理
(立教大学法学部教授)
【原田委員長代理】 私は独立行政法人評価に携わって約10年になります。この間、運用の大きな変化がいくつかありましたが、その1つに、目標期間の途中で各法人に次々と新しい目標が付与される、ということがあります。これは法人に対する信頼の高まりの表れと考えられますが、他方、現在のリソースでやれるのだろうか、と考えることがあります。
こうした問題意識は各法人共通ではないかと存じます。
本日は、「人材の確保・育成」の観点から、法人のリーダーのお三方に、取組とお考えを伺いました。委員の皆さまはどうお感じになったでしょうか。
【栗原委員】 独立行政法人評価制度委員会では、中長期計画を見させていただくわけですが、業務目標の議論とともに、経営基盤についての議論も意識的に行っています。その経営基盤の中でも特に重要なのは「人材」です。民間でも法人でも、「人材」は経営上の非常に重要なテーマで、人材戦略を開示していく動きは民間ではすでに始まっています。
しかし、人材確保やエンゲージメント向上、どう人材を育成していくか、ということなどはなかなか王道がありません。本日のお話には、様々な工夫と参考になる例が多分に含まれていたと思いました。ぜひ他の法人でも参考にしていただきたいと思います。
【清水専門委員】 資格の取得は手段の手段だと思いますが、そういった本当の土台からはじめて、自分たちの効率だけではなく、事業者へのデータ提供が早まったとか、システムを作り直すときのコストダウンにもなるとか、当初に狙った以上の成果が出ているのではないかと思います。
取組のステップのなかで、苦労やよかった点はどういうところでしょうか。
【長谷川理事長】 職員は、経営者が気がつく前に、どんどん新しいことにチャレンジしてくれます。大事なことは、一人一人の職員がやったことに対して、経営者の言葉で「こういう成果につながっている」と翻訳することだろうと思います。
新しい取組を提案してくれた職員としっかり議論し、各部門と一緒に取り組んでもらう。そして、ちょっと目に見えるものが出たら、「こんなことができているぞ」と横展開する。すると、他部門でも何かいいことができるので、そのノウハウをまた持ってくる。そういう良循環が生まれてくると思います。
【澤田委員長】 人的資産の最大化・最大活用には2つポイントがあると思います。1つは、個人の可能性、潜在能力をいかに引き上げるか。もう1つは、それを組織としてどういかすか。
それぞれどういう工夫をされているでしょうか。
【川埜理事】 組織の目標や理念の提示に加え、上司・部下や同僚の関係で、それぞれが自分を磨き、連携しながら仕事をすることが、個人のポテンシャル向上にもつながると感じています。
それを組織がどういかしていくか。「適材適所」と言うのは簡単ですが、実際に実行することが大事だと思います。そのためには、上司・部下でしっかり見るし、人事部門もしっかり見る。特性を見極めながら人材を配置することで個人のポテンシャルを組織として最大化できるのではないかと思っています。
【浅野理事長】 研究開発法人では、研究職のスキルアップの評価と一般職の評価、それぞれ違うシステムで考えなければいけないという悩みがあります。
一般職は、事務的な仕事というイメージが強かったですが、研究所として期待することが、サイエンス・アドミニストレーションなどに広がっていて、そうしないと研究所としてやっていけないという状況です。このため、能力をもっと広いところでいかし、場合によっては専門的なところまでやってもらいたい。これまで一般職の職務には関係ないと思われていたような資格についても取得のサポートを広げていて、ポストも考えて評価していきたいと思っています。
研究職は、管理職になると自分の研究の時間が確保できないという面があります。決定的な打開策はまだ見出していませんが、何とか魅力を広げる道を模索しているところです。
【澤田委員長】 やはり個人の顕在力だけではなく、潜在力を上げることで組織の力が上がると思います。それにはおそらく対話が重要で、単にコミュニケーションを図るというだけでなく、お互いを尊敬し、異なる意見を聞く機会をたくさん持つことが非常にいいと考えます。
それを組織としていかすのは、マネジメントの問題ですが、「人を育てる」というより「人は育つ」というスタンスをマネジャーが持ち、メンバーをサポートして引き上げることが重要です。メンバーをいかすという点では、全然違うと思います。ひょっとすると「管理職」という名前そのものが問題かもしれませんが、そういうことも工夫されると、もっとすばらしい成果にもつながると思います。
【原田委員長代理】 組織が魅力的になり、「この組織にいてよかった」と思えるというのは、すごく大切です。
他方、管理する側からすると、人材育成は、投資のリターンが得られるかどうか分からないし、育てたのに外に行ってしまうとか、なかなか芽が出てこない、といった、ある意味冗長性があり、これをあえてやらないといけない。
どうしても与えられた目標をこなすことに傾注しがちですが、お話を伺って、どの法人でも一定のリターンが出て、次のステップを狙える余地が十分あると感じました。
独立行政法人評価制度委員会では、これからも先進的な取組をサポートしたいと考えています。
本日の議論が、皆さまにとりまして参考になれば幸いです。
◆当日の模様は、総務省のYou-Tubeチャンネルで公開しています。ぜひご覧ください。
【シンポジウム再生リスト】
【各法人の発表資料は以下のページに掲載しています】
※詳細は本紙をご覧ください。
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