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健康一口メモ 447号

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長崎県波佐見町

ダヴィンチ手術ってなに?
・東彼杵郡医師会 松尾圭(波佐見町)

近年、ロボット支援手術というワードを耳にする機会が増えています。私が病院勤務時に外科手術を行っていた十数年前は、ロボット支援手術が日本に導入されたというニュースを聞く程度で、実際に目にする事はありませんでした。しかしこの10年間で全国の大病院に一気に普及しました。通称「ダヴィンチ手術」です。外科医の「手」で行われていた手術が、1990年代から腹腔鏡や胸腔鏡などの鏡視下手術が普及、標準化し、その進化系であるロボット支援手術の適応範囲が次々に拡大しています。鏡視下手術のメリットは、出血量が少ない、傷口が小さい、術後の疼痛が少ない、回復が早い、機能の温存が向上するなどが挙げられます。鏡視下手術は体内に挿入したカメラの映像をモニターで観ながら、別の穴から挿入した鉗子類を術者が直接操作して手術を行いますが、ダヴィンチ手術では術者は患者さんの側にはいません。サージョンコンソールと呼ばれる操縦ボックスで、執刀医は術野の3D拡大画像を覗き込みながら手元のコントローラーを操作します。機械が操作するアームと鉗子が連動し、自身の手の様に自在に動きます。「まるで自身が小さくなって、患者さんの体内に入り込んで手術をしているようだ」そんな感覚を医師たちは抱く様です。さながらVRの世界ですが、現実を操作しています。執刀医は清潔術衣なしで、無理な姿勢を強いられず座って操作できるため、長時間手術の肉体的負担やストレスが軽減されます。それによって確実な手術を行う事ができます。もちろん訓練と資格は必要ですが、そう遠くない未来には、遠く離れた施設間での遠隔手術も実現できるでしょう。
外科医はその時代の最先端を目指し、日々努力と研鑽を積んでいますが、何しろ多忙で外科医不足も深刻です。若い医師たちがロボット支援手術やAI技術を上手く使いこなせれば、医師の負担も軽くなり、さらなる医療の進歩に繋がるでしょう。我々かかりつけ医にもその新しい知識と刺激は必要になります。
現在のダヴィンチ手術の保険適応は前立腺癌、腎臓癌、膀胱癌、食道癌、胃癌、結腸癌、直腸癌、膵癌、肺癌、子宮体癌等の悪性疾患、子宮筋腫、縦隔瘍等良性疾患などがあり、これから更に適応拡大されるでしょう。

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