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伊那市長のたき火通信

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長野県伊那市

■秋の夜ながの読書
「咳(せき)をしてもひとり」は自由律の俳人、尾崎放哉(おざきほうさい)の俳句です。明治42年(1909年)に東京帝国大学を出て一流企業に就職したものの、酒癖の悪さから身を崩し会社を辞め、家族とも別れ周囲から疎まれるような人生を送った尾崎放哉。小豆島に一縷の希望を抱きながら流浪の人生の最晩年を過ごした小説が、吉村昭著の「海も暮れきる」(講談社)です。読後感は暗く重い疲労感が残りますが、酒から抜け出せない放哉の心の揺らぎが絶妙に表現されています。最近読んだ本のなかでも記憶に残る小説です。
読書は好きです。歴史書・ビジネス書・小説・随筆・純文学などに加えて、植物・民俗・山岳・自然科学など気になる本は何でも読みます。読み方も多ジャンルの同時進行型で、寝室の枕元に数冊、トイレ、市長車、市長室にそれぞれ本を置いて、同時に読み進めるスタイルです。
そもそも本好きかと言えばそうではなく、小学生の頃は殆ど本を読まない児童でした。中学2年生の時、図書委員長の○○子が、クラスのみんなの前で、「先生、孝君は図書館に一度も来ません。本は一冊も借りていません」と名指しで指摘されたことがありました。「孝君、だめだぞ。ちゃんと本を読まなきゃ」と面前で担任から注意をされて、渋々図書館に行ったのが事の始まりです。「○○子め、大きなお世話だ」と思いながら、図書館で借りた本が、宮沢賢治の「虔十公園林」でした。理由はすぐに読み終えられる短い本だったからです。「風の又三郎」、「注文の多い料理店」、「雪渡り」、「やまなし」、「よだかの星」、「銀河鉄道の夜」と、次々と宮沢賢治の童話を読み重ねました。その後、賢治の人となりに興味を抱き、地質学・植物学・気象学・天文学と、私の視野が広がりだしたのも事実です。
最近読んだ本は、松尾芭蕉の門人のひとり八十村路通を書いた、正津勉著「乞食路通」。そして終戦後の北アルプスを跋扈していた山賊たちの交流を愉快に記した伊藤正一著「黒部の山賊」。そして今読んでいる本は、山口燿久著「北八ッ彷徨」(枕元)、永田芳男著「秋の野草」(トイレ)、神長幹雄著「山は輝いていた」(市長車)などです。

伊那市長 白鳥考

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