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[特集]「対話鑑賞」ってなんだろう?

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長野県東御市

みなさんは、「表紙」の美術作品をみて、どんな作品タイトルだと思いましたか?
いろいろな想像が膨らみ、たくさんのタイトルが思い浮かんだのではないでしょうか。作品には、作者がつけたタイトルがあります。ただ、タイトルを知らなくとも、美術作品の受け取り方に正解は無いため、自由な見方・感じ方ができます。
その作品から浮かぶタイトルや感じたこと、思いついたことを自分の言葉で発言し、ディスカッションする鑑賞方法「対話鑑賞」が全国的に注目を集めています。

今年度、これまで学芸員が定期的に行っていた対話鑑賞を全国初の試みとして、市のすべての小中学校で朝の時間を活用して行う〝朝鑑賞〟の取り組みが始まりました。
その効果や今後の展望について、16年前から対話鑑賞を行っている和小学校宮下校長とその取り組みを推進する地域おこし協力隊山﨑さんにお話をお伺いしました。

■市が取り組む対話鑑賞とは
先生が進行役となり、美術作品を通して、作品から見えるもの、色使い、自分の感じ方等を子どもたちが思い思いに発言し、先生はその発言をつなげ、さらに考えが広がるような働きかけを行う対話型の鑑賞方法です。なかでも、一日の中で新しい発想やアイデアが出やすい朝の時間帯で行う対話鑑賞を〝朝鑑賞〟といいます。

◇タイトル「月」
油彩、キャンバス1455×1120[1975年制作]
作者:荒井 茂雄(あらい しげお)(1920‒2023)
東御市田中出身の造形作家

日本を代表するアーティスト猪熊弦一郎(いのくまげんいちろう)に師事し、洋画・日本画という区分や一つのスタイルにとらわれることなく、新たな表現への探求を続けた作家。H28年に500点以上の作品が市へ寄贈された。
提供:丸山晩霞記念館

■市での対話鑑賞の取り組みについて
山崎:16年前、梅野記念絵画館に来訪したニューヨーク近代美術館のアメリア・アレナスさんを講師として、地元の小中学生・先生を集め対話鑑賞を行ったことが長野県の対話鑑賞の始まりです。市ではそこから、丸山晩霞記念館の学芸員を中心に、小中学校に出向き対話鑑賞を推進してきました。

宮下:私もアレナスさんのイベントに参加し、そこから授業で対話鑑賞を取り入れるようになりました。授業を通じて生徒の表現・理解が深まることを実感し、小中学校自体に根付く仕組みになればと、今年度から全国で初の試みとして市全体の小中学校で行えるよう推進の活動に協力しています。

■対話鑑賞のメリット
山崎:美術作品を介して、担任の先生やクラスの友達と思ったことを話し、お互いの意見やいろんな考えを聞くことで、コミュニケーションが活発に行われるようになります。

宮下:そうですね。日常生活を通して、生徒たちは、いろいろと悩みながら表現することに気を使っています。対話鑑賞は美術作品を見て表現を気にすることなく、感じたことを表に出し合い、それを受け止める時間です。その経験を重ねることで、自己表現・他者理解がより深まり、お互いに影響し合う関係・学び合う関係・育ち合う関係が強くなることがメリットです。

■今後の展望
山崎:今は先生が進行役となって対話鑑賞を進めていますが、今後は生徒たちが進行役となれるよう推進していきたいです。そうすれば、自己表現、他者理解が今以上に深まると考えています。また、美術に興味がない子が朝の10分間の時間で今まで触れたことがなかった美術作品に触れ「よくわからないけど面白いな」という気持ちをもち、大人になったときにふと思い出して、改めて美術に触れるきっかけになればと願っています。

宮下:朝鑑賞の時間を楽しい時間だなと、生徒も先生たちにも思ってもらいたいです。そして今は、美術館から実物の作品や画像データの提供を受けて行っている対話鑑賞が、今後は先生たち、子どもたちから見てみたい作品が積極的に出てくるような取り組みになればと思っています。

◇地域おこし協力隊
山崎 麻由(やまざき まゆ) 隊員
対話鑑賞を推進するため、今年4月から東御市の協力隊員に。

◇和小学校
宮下 聡(みやした さとし) 校長
16年前から対話鑑賞に力を入れ取り組んでいる。

※「山崎」の「崎」は環境依存文字のため、置き換えています。正式表記は本紙をご覧ください。

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