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オブシディアン通信No.095

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長野県長和町

『オブシディアン(obsidian)』とは、英語で黒耀石という意味。黒耀石の代表的な原産地は、我が町の和田峠・星糞峠(ほしくそとうげ)をはじめとした霧ヶ峰・八ヶ岳一帯に密集しています。

令和5年度 長和町青少年海外派遣交流事業『長和青少年黒耀石大使』
オランダ/ライデン市―英国/セットフォードそしてストーンヘンジへ!

■黒耀石大使渡英事業再開
8月6日(日)~15日(火)の日程で、長和青少年黒耀石大使3期生と4期生のうち14名が、長い長いコロナ禍のトンネルをくぐりぬけて、オランダとイギリスへの海外研修へと飛び立ちます。
黒耀石大使3期生は令和2年、4期生は令和4年にそれぞれイギリスでの交流研修を実施する予定でしたが、新型コロナウィルスの感染拡大とロシアによるウクライナ侵攻問題のために、海外渡航は延期となっていました。大使になった当初、中学2年生~高校2年生であった大使たちは、現在、高校1年生〜大学生となり、その半数は進学のために長和町を離れて県外で暮らしています。しかし、zoomを利用したオンラインの石器づくり研修も実施しながら、渡航の準備を進めています。
今回の渡航には、大きな二つの任務があり、大使達はオランダ経由で英国に向かいます。

■幕末(ばくまつ)のシーボルトコレクションを追って
任務の一つは、3期生の発足当初からのもので、幕末に来日したシーボルトが収集した「シーボルト・コレクション」の黒耀石の見学と調査です。特に、このコレクションの中の「信濃和田峠ホシクソ」という書付(かきつけ)のある黒耀石資料について、黒耀石の研究者と一緒にオランダに立ち寄り、調査を実施します。
日本で「シーボルト」と呼ばれている彼のフルネームは、フィリップ・フランツ・バルタザール・フォン・シーボルト。江戸時代末期にあたる1823年、27歳の植物学者だった彼は、東洋学研究を志(こころざ)し、ドイツ人でありながらオランダ人と偽(いつわ)り、長崎の出島(でじま)のオランダ商館へ来日を果たします。
西洋人として初めて出島の外に塾を開校し、日本の人々へ最新の西洋医学を教えはじめたシーボルトは、医師として活躍する一方、日蘭(にちらん)貿易に関わる情報を収集するための「市場調査員」という裏の顔も持っていました。6年に及ぶ日本での滞在中に収集した植物の標本(ひょうほん)や地図、美術工芸品などは数万点にも及び、当時のヨーロッパにおける日本研究の第一人者として、のちに高く評価されました。
黒耀石大使が調査する「ホシクソ」の名が表記されたシーボルト・コレクションは、現在、オランダライデン市のナチュラリス生物多様性センターに収蔵(しゅうぞう)されています。昨年、事前調査としてオランダを訪問し、明治大学黒耀石研究センターの協力を得てポータブル型の蛍光(けいこう)X線計測器で資料の元素組成(げんそそせい)を計測しました。その後、その計測値を基に産地を同定(どうてい)するための分析を行いましたが、書付のある黒耀石の一つは、確かに和田峠産の黒耀石であることが判明(はんめい)しました。8月の調査で大使達は、その資料の大きさや特徴を記録する予定です。このことをきっかけとして、「ホシクソ」が元祖(がんそ)黒耀石大使として海を渡った江戸時代の日本について知るとともに、国を超えた文化の交流が互いの地域にどんな影響を与えたのか、国際交流の意義についても考えてほしいと期待しています。

■英国ストーンヘンジでフェスティバルに参加
もう一つの任務は、世界遺産としても有名な遺跡である「ストーンヘンジ」で、来場者に向けて黒耀石の石器づくりの体験指導を英語で行う、というものです。
ストーンヘンジは、イギリス南部に位置する遺跡で、巨大な石の板が環状(かんじょう)に並んだストーンサークルとして知られ、その写真を見たことがあるという方も多いのではないでしょうか。
遺跡の時代は、紀元前2500年から紀元前2000年の間に石が立てられ、それを囲む土塁(どるい)と堀は紀元前3100年頃まで遡(さかのぼ)ると言われています。日本では、縄文時代の頃に相当します。日本でも2021年に世界遺産に認定された北海道・北東北の縄文遺跡群に、類似(るいじ)する遺跡があるとして話題になっています。このストーンヘンジにある博物館では、2022年から今年の9月まで、日本の「縄文文化」をテーマにした企画展が開かれており、有名な火焔型(かえんがた)土器なども展示されています。大使達によるワークショップでの参加は、その展示の企画者であり、長和町の国際交流の窓口となっているセインズベリー日本藝術(げいじゅつ)研究所の所長であるサイモン・ケイナー教授からの招待を受けて、実現することになりました。

■英国セットフォードで新たな出会い
その他にも、国際交流事業の交流相手であるイギリスセットフォードのエンシェントハウス・ティーンエイジヒストリークラブのメンバーと交流し、彼らに黒耀石の石器づくり体験指導をおこなったり、星糞峠の「双子遺跡」であるグライムズグレイブズフリント採掘(さいくつ)鉱山を見学します。
オランダに続くイギリスでは、セットフォード~ストーンヘンジ、そしてロンドンと、まさにイギリス本土を横断する旅です。町の皆さんに大きな大きな報告ができるように、まずはあと1か月半でみっちりと事前研修をしていきます。

お問い合わせ先:黒耀石体験ミュージアム
【電話】41・8050

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