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【特集】むつ市には何もないのか…「何があったら、あるのか」(1)

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青森県むつ市

~地域おこし協力隊のお話~
■むつ市地域おこし協力隊、4つの物語
◇いつも子どもたちに言ってるんです。「何があったら、あるのか」
小池 拓矢(こいけ たくや)さん
神奈川県逗子市出身

小池さんはジオパーク推進員として3年働き、「ガイド」として、ジオパークをガイドしてみたいとの思いで一念発起したが、1年後にはコロナ禍の影響で実家に帰ることに。
しかし、実家の神奈川県逗子市で見かけたむつ市での「地域おこし協力隊」の文字。未だ開拓されていない自然豊かな地、ブル―オーシャンで挑戦したいと戻って来た。
「自然の素材っていうのはむつ市含め下北半島いっぱいあるんです。観光ガイドと見る人は少ないかもしれませんが、そこがいい。地元の近くには鎌倉市があり観光地化されて、ガイドもいっぱい。マリンスポーツをやっている西海岸だってありますが、ここ(むつ市)でチャレンジしてみる楽しさはあると思います」
まっすぐ視線を向け、続けて言う。
「実家と比較してみると、温泉もあるし、すぐ近くには滝もあり、衣食住整う店だってある。こんなに素晴らしい土地は普通じゃないんだよ。と。みんなここは何もないと言うんです。大人だって。なのでいつも子どもたちに言ってるんです。何があったら、あるのか。と」
日本広しと言えども、こんな素晴らしいスポットがむつ市にはたくさんあるんだと気付かされた。笑顔を見せ、「そういうのは昔から住んでると多分気付かないですよ」と。
市内でも積雪が多い川内地区で邪険にされがちな雪を活用したフェスティバルをアクティビティ化するという逆転の発想で成功した。「今後は地域の人が気付かないこと、やったことがないことやって成功させることこそが、外から来た私らの価値になるのかなって。高屋龍一館長とも話してて継続していくのが大事だと、常に考えています」

◇もう一回見出すんです 脇野沢の魅力を。
大崎 祐暢(おおさき まさのぶ)さん
青森県青森市出身

午前2時に起き、朝4時には漁の手伝いへ、向かうは脇野沢。漁が終われば協力隊。漁もすればイベントの企画だってするのが彼の役目だ。
県営浅虫水族館で働いていたが、海の生き物に関する教育をしたいと思い退職した。候補もあったが希望が合致するのが、むつ市海と森のふれあい体験館であり、地域おこし協力隊に着任した。彼もまた「新しいことにチャレンジしたく、まだこれから発展していく可能性を感じた」と言う。また、「川内、脇野沢の人の繋がりが強い。市外にはない市民との一体感を感じられる場面が多くて」と大崎さん。
2月のスノー×ライトフェスの初開催をはじめ、地域おこし協力隊のみんなで推し進めるイルカウォッチングや渓谷散策、ホタテフェスティバルなど、自然を活かした活動、教育は市民と一体にならなければ成り立たないもので、黒く日に焼けた肌から白い歯がこぼれる姿に充実感を覗(のぞ)かせた。
今後の展望はないですかとの問いに「脇野沢に住みたい」と答えた。「脇野沢の方は自分の生活を営むという感じがあるんですが、もっと可能性を感じてるので、魅力を発信する仲間を集めて、焼干しとか真だらも含めて(外に発信するため、)もう1回見出すんです、脇野沢の魅力を。プレテストを重ねて、来年にかけてイベントとしてやっていきたい」と。
また、住み始めてからの地元へ貢献したいと考えている様子で、「雪も多いので人が少ないところでは自分が除雪できるようになれば住みやすくなるかなとか。漁協に多々行くので、自分がフォークリフトを乗りこなせれば、少しでも貢献できるのかなと考えています」
「脇野沢だと、どこに住んでも楽しいと思うので。例えば九艘泊地区は魚種が多いので釣りがすごい楽しいし、蛸田地区には常夜燈があって夜釣りも良い。寄浪地区は知り合いの漁師さんが多く一緒に漁をしてても楽しいです。本当にどこでも住みたいですね」と語る彼の柔和な姿は、脇野沢の穏やかな内湾と良く似合う。
今日もまた漁へ。今日も彼はむつ市を興おこす。漁が終われば協力隊。

◇それぞれ木々や海、色味の違いが凄く綺麗なんです。
山田 菜生子(やまだ なおこ)さん
愛知県長久手市出身

海は青、木々は新緑を連想すれば緑と想像するだろう。しかし、そんな単純な色合いでない川内や脇野沢特有の自然な色が彼女の目に映る。
世界共生学部という日本のみならず世界各地の人々と絆を結び多文化共生時代を生きる人材を育てる学部に所属している彼女だが、入学当初からコロナ禍で2学年終わりまでオンライン授業が続いた。フィールドワークの講義もあったが、もちろんできず。このまま就職活動となる時、ふと思い立った。
「もう少しやりたかった。学びたかったことがあったんじゃないか」
元々、人と自然の共生に興味があった彼女は文系大学で自然分野は詳しくはなかったが、大学の教授に相談し「地域おこし協力隊」の制度を知った。全国各地の協力隊400件の風土や特性を調べ尽くし、ある地域が目についた。それがむつ市だった。
「イルカとの共生というのに目を奪われたのと、里山資本主義という人と自然の共生の概念の中に「里地里山」っていうのがあるんですが、手に取った本に川内地区の紹介があって」その後、彼女は休学をし、舞台をむつ市に変えたのだ。
着任してからは、地域の高校生らと魅力を発掘しようと漁師やマタギなど多くの人から話を聞き、この地区の奥深さ、面白さを感じている。
少々照れたような表情で彼女は言った。
「私、ネイルが好きで色に興味があるんです。川内、脇野沢によく行くんですが、それぞれの綺麗な自然を表す色を開発したい。川内の海や袰川の星空を表現した色を出して、それをネイルにしたいです」
各々(おのおの)、自然の色味が地域で違うのかと驚かされた。
「それぞれ色味の違いが凄く綺麗なんです。何か移り変わっていく感じが、すごく素敵だなと」
その色味のネイルを開発したら、自然と人、加えて世界とも共生する「架け橋」になると強く感じた。

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