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文化財通信 その218

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静岡県伊豆の国市

■変わりゆくもの・変わらないもの
ー狩野川の「かわかんじょう」ー

伊豆の国市指定文化財の中に、神島で、毎年8月1日に行われている伝統行事「かわかんじょう」があります。
かわかんじょうのルーツは、狩野川の水霊を鎮め、村を護り、また水難者の霊を慰めるものという説や、盆の精霊送り、あるいは、「虫送り」「病送り」ではないかとする説があります。
伊豆の奇祭とも呼ばれるこの行事では、約3m四方の竹枠に麦わらを敷き詰め、厚さ約1mに設えたいかだ状の構造物の中心に、高さ5〜6mの松明を立てたもの(かわかんじょうと呼ばれています)が用意されます。
8月1日の夕刻、かわかんじょうは若者たちの手で、ゆっくり狩野川の水面を移動します。松明には炎が灯り、はやし声とも相まって、その光景は幻想的であり、奇祭の名にふさわしいものです。
この神島におけるかわかんじょうは、保存会の皆様の手により続いています。かつて他の地区でも、かわかんじょうのような行事が行われていたそうですが、現在では見ることができません。
川には、人間にさまざまな恵みをもたらす慈悲深い一面もあれば、洪水によって一瞬のうちに田や家屋、命まで奪い去ってしまう恐ろしい一面もあります。このような大きな自然の力の前に、私たちの先祖は、神意を感じ、魂の安らぎを求めてかわかんじょうのような行事を行ってきたのかもしれません。
悠久の時を経ても、私たちの狩野川に対する畏敬の念は変わりません。これからも川の流れに思いを託す光景は続いていくことでしょう。

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