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特集「産む」を巡る「公共」〜不妊症とプレコンセプションケアを考える〜(3)

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静岡県島田市

■疑う(うたがう)生殖機能の安全神話

▽婦人科を中心に行われている日本の不妊治療は「女性の問題」とされがちだ。しかし、一般男性の約10%に精液所見の問題がみられるという。WHO(世界保健機関)の調査によれば、不妊のおよそ半分、48%は男性に原因がある。
加齢により、男女ともに妊孕性(にんようせい)(妊娠する力・妊娠させる力)は低下する。晩婚化・晩産化に伴い、不妊症の判明が遅れれば、治療可能な期間も短くなる。男性が、妊活や不妊治療の早期段階で積極的に関わることは、子どもを望むカップルにとって重要になる。
保険適用後は、全ての不妊治療について夫婦・パートナーが、共に医師から治療計画を受け同意することが必須となった。男性が、妊娠・出産に関する正しい知識を身に付け、自身の生殖機能を過信することなく検査につなげるためにも、医療との接点が今まで以上に必要とされている。

▽男性の不妊治療も、保険適用の対象範囲が広がった。これまで、助成制度を活用しても自己負担が大きかった精巣内精子回収術(TESE(テセ)、micro(マイクロ)-TESE)や、無精子症に対する遺伝子検査なども、保険診療が可能になった(精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)手術は従前から適用対象)。

24%+24%=48%
WHO「不妊症原因調査(1996年)」

▽16% 男性不妊 無精子症
厚生労働省「平成27年度子ども・子育て支援推進調査研究事業(精液所見別患者数7,176人中1,185人)」

◆『男性は自身の身体に関心を持たなさ過ぎ』
東邦大学医療センター大森病院泌尿器科
小林秀行(こばやしひでゆき)准教授
・男性が自身の不妊症を疑わない背景とは?
まずは、社会的な認知度の低さ。多くの場合、自分に不妊の原因があるとは、想像すらしていないでしょう。もう一つは専門医の少なさです。日本生殖医学会が認定している医師は、わずか71人のみ。クリニック自体、身近な存在ではないのです。加えて「病気ではない」との肌感覚から、休暇を取って受診するという認識がないのでしょう。
・男性不妊の主な原因は?
約8割は造精(ぞうせい)機能障害で、うち半分は原因不明、約36%は精索静脈瘤です。その次はED(イーディー)などの性機能障害、精路(せいろ)通過障害と続きます。
・不妊治療の進め方は?
精子の濃度や動きを調べる精液検査の他、触診や超音波、ホルモン採血などがあります。無精子症の場合、造精機能の有無で手術方法が異なります。閉塞性(へいそくせい)には精巣を少し切開するTESEを、非閉塞性には精巣を大きく切開して手術用顕微鏡を用いるmicro-TESEを行い、精子の採取を試みます。
・早期治療のメリットは?
外来診察で、多くのケースに向き合ってきた経験上、特に無精子症のリスクは、結婚など人生の岐路に影響します。micro-TESEでの精子採取率は30%ほど。決して高くない精度ですが、早く治療にアプローチすれば、確率が上がるかもしれません。
・備えるべき意識とは?
男性には、女性の月経不順のような不妊症のシグナルはありません。不妊症の日本人男性7000人を調べたところ、16%が無精子症でした。一定数で、子どもを授かれない人がいるのです。若い頃から身体に関心を持つことや、生殖機能の検査などが常識になればと思います。

※男性不妊の詳しい症例などについては、QR(二次元コードは本紙掲載)からホームページで。

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