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特集「産む」を巡る「公共」〜不妊症とプレコンセプションケアを考える〜(4)

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静岡県島田市

■奪う(うばう)自己実現と社会貢献

▽不妊退職 4人に1人 
厚生労働省「平成29年度不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査研究事業(仕事と不妊治療の両立状況[治療中・治療経験者/男女別])」

▽不妊や不妊治療に悩む人が増えていることから、労働施策総合推進法、通称パワハラ防止法(2020年6月施行)により、「不妊治療に対するハラスメント」防止に向けた措置が義務化。男性労働者に対する言動も、男性不妊治療の必要性の有無に関わらず対象になる。

▽2,083億円 損失
NPO法人Fine「2020年2月プレスリリース(試算:企業活動の付加価値の減少と、育成と新しい人材の雇用・育成費用の合算)」

▽不妊症と不妊治療への理解や支援の不足は、企業にとって人材確保の面だけでなく、安定経営にも影を落とす。
厚生労働省の調査によれば、不妊治療中または治療経験者の女性の23%、およそ4人に1人が「両立できず仕事を辞めた」と答えている。
不妊当事者による不妊当事者のための自助グループであるNPO法人Fine(ファイン)は、治療の負担には「身体的・精神的・経済的・時間的」の4つがあると指摘する。働く女性にとって、体調の変化や周囲の無理解、突発的で頻回な通院は、仕事への影響が大きい。また、残念なことに妊活や不妊・不育治療を妨げ尊厳を傷付ける行為(プレ・マタニティーハラスメント)を職場で受け、退職を余儀なくされる人もいる。
同法人は、企業の不妊退職による経済損失を1345億円以上と試算。退職者と新採者の育成費用を合算すると2083億円にのぼる。

◆NPO法人Fine
野曽原誉枝(のそはらやすえ)理事長
「正しく不妊を知ればきっと社会は変わる」
・主な活動内容は?
患者が正しい情報に基づき、自ら納得して選択した治療を安心して受けられる環境と、体験者が社会から孤立せず、健全な精神を持ち続けられる環境を整えること。それらによる社会貢献を目指しています。(1)患者の支援 (2)不妊の啓発 (3)患者と医療・公的機関との橋渡し (4)意識と知識の向上 (5)治療環境の向上が、私たちの使命です。
・活動や支援の対象者は?
私たちは、現在・過去・未来の不妊体験者を支援する会です。子どもを望むも授からない(かもしれない)ことを、つらい・悲しいと思ったことがある人は、男女を問わず仲間だと思い活動しています。
・不妊治療と仕事の両立に伴う生きづらさとは?
一般不妊治療も高度生殖補助医療も、最終的に治療(胚移植など)を施されるのは女性の体です。予定を立てにくい治療なので、職場の理解と協力が欠かせません。支援制度が広まりつつあるとはいえ、従業員への周知や活用しやすい環境整備も課題です。
・不妊退職の影響は?
治療と仕事の両立を望む女性の多くは、企業にとって中堅層。穴埋めに人事異動や新規採用を試みても、同様のスキルを蓄積した人材の確保は、簡単ではありません。また、書面上は「自己都合退職」。原因が究明できなければ、支援制度の整備が遅れ、負の連鎖に陥ります。
・保険適用で不妊治療の裾野は広がった?
経済的負担の軽減は、ある程度の受診のハードルを低くしました。しかし、例えば顕微授精の治療費は約60万円。若い夫婦にとって、3割負担でも18万円の支払いは、依然高額です。さらに、撤廃されていない年齢制限と回数制限は、カウントダウンのようなストレスとなります。
・患者に優しい社会とは?
不妊は、決して特別な人の特別な治療ではありません。一方で、疾病名が付くことは半数程度で「どこも悪くない」との偏見が根強く、公表を阻みます。不妊を普通に話せる社会に。さまざまな家族や幸せの形を認め合い、応援し合える社会の実現に向けて、当事者のメッセンジャーとして活動を続けます。

※NPO法人Fineの活動内容や各種アンケート結果については、QR(二次元コードは本紙掲載)からホームページで。

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