染谷絹代(そめやきぬよ)市長が自ら、市政運営の方針を分かりやすくお伝えします。
今月のテーマ:届け、支えの手 市民の複雑な課題に寄り添う重層的支援とは
■多様化する福祉の課題
「笑う門には福来る」と申しますが、本年も皆さんにとって幸多き一年であることを願いながら、心新たに市政羅針盤をお届けいたします。
今月のテーマは、福祉の在り方についてです。長年にわたる日本の福祉制度は、生活保護、高齢者介護、障害福祉、児童福祉など、対象者の属性や課題ごとに対応する行政の部署が異なり、縦割りの支援体制の中で専門的な支援が提供されてきました。
一方で、現代社会は、ヤングケアラー、社会的孤立、虐待、生活困窮、8050問題など、個人や世帯が複雑で多様な複数の課題を抱えるケースが増加し、現状の支援体制では適切に対応していくことが難しいケースが出てきています。本市では、個人や世帯が抱える課題をそれぞれの専門家が集まって協議するケース会議などで連携を図ってきましたが、あらゆる相談を包括的に受け付ける「相談窓口の一本化」までには至っておりません。今回はこうした状況を鑑み、「重層的支援体制」について、お話したいと思います。
■包括的な支援に向けた新たな取り組み
まず、皆さんは「重層的支援体制整備事業」という言葉を、聞かれたことがあるでしょうか。介護、障害、子育て、生活困窮といった分野別の相談体制では、解決に結びつかないような「くらしの困りごと」に対応するため、市全体で「分野を問わない相談支援」、「参加支援」および「地域づくりに向けた支援」を一体的に実施することで、包括的な支援体制を整備する事業をいいます。わかりやすく言うと、制度や仕組みの垣根を超えて「支援のしづらさ」を少しでも改善し、「生きづらさ」を抱える人たちの生活を支援していこうとする事業です。
国では、令和3年4月の改正社会福祉法に基づき、「重層的支援体制整備事業」が創設されました。実施を希望する市町村の手あげに基づく任意事業ですが、本市では令和6年度からの段階的実施に向け、「重層的支援体制整備」を軌道に乗せるための準備に取り掛かっています。まずは「分野を問わない包括的相談窓口」の設置から、着手したいと考えています。既存の支援機関などの機能や専門性を生かし、相互にチームとして連携を強めながら、市全体の支援体制を創ってまいります。
支援を必要とする人にとっては、(1)分野をまたぐ複雑な生活課題を抱える人が、たらい回しにならず、(2)自覚している生活課題以外の根本的な課題への支援が得られます。また、地域で支援する団体や専門職にとっては、(1)財源や規制などによって取り組みが分断されることがなく、分野をまたぐコストが小さくなり、(2)全てを抱え込む必要がなく、支援の負担を軽減できるなどの改善が進みます。
■地域のつながりで生活課題を抱える人を支える
「重層的支援体制整備事業」が創設された背景として、地域共生社会の実現があります。地域共生社会とは、制度・分野ごとの「縦割り」や「支え手」「受け手」という関係を超えて、地域住民や地域の多様な主体が参画し、人と人、人と資源が世代や分野を超えてつながることで、住民一人一人の暮らしと生きがい、地域を共に創っていく社会のことを言います。つまり「重層的支援整備事業」は、行政や社会福祉協議会など関係機関だけで役割を果たせるものではなく、地域のつながりの中で支援を必要とする方への「気づき」がベースにあって、成り立つ事業ということをご理解いただきたいです。
本市では、これまでも「第2次島田市総合計画後期基本計画」や「島田市地域福祉(活動)計画」に「地域共生社会の実現」を掲げ、さまざまな取り組みを進めてきました。重層的支援体制整備事業も、地域共生社会を実現するための新たな取り組みの一つとしてさらに力を入れてまいります。
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