染谷絹代(そめやきぬよ)市長が自ら、市政運営の方針を分かりやすくお伝えします。
今月のテーマ:中学校の部活動と地域クラブ活動の今後のあり方について
■部活動の変革と地域との連携
「部活動の地域移行」という話題をテレビや新聞などで目にする機会が増えました。少子化や教員の働き方改革の影響を見据えて、部活動を学校の外、つまり地域での活動に変えようとする動きが国主導で進みつつあります。具体的には、スポーツ庁と文化庁が2022年12月に策定したガイドラインに基づき、まずは「公立中学校」の「休日の部活動」を優先して、段階的に地域移行しようとしています。部活動の地域移行は、子どもたちや保護者にどのような影響をもたらすのでしょうか。今月はこのテーマについて深掘りしてみたいと思います。
「部活動の地域移行」とは、これまで中学校の教員が担ってきた部活動による中学生の活動の機会や場を地域のクラブ・団体などに移行することをいいます。現在は、一部の自治体で先駆的に地域移行が行われており、自治体が地域の団体と連携したり、体育・スポーツ協会や文化協会等が主体となって運営したりするなど、いくつかのタイプがあります。
■子どもたちの利点と教員の負担軽減
まずは、地域移行のメリットについてお話します。生徒にとっては、自分が通う学校だけでは人数が足りずにできなかった活動種目も、地域で複数校の生徒が集まれば可能になる場合があり、より専門的な指導を受けられるようにもなります。ちなみに、市内中学1・2年生を対象に、昨年実施したアンケートによると、約86%の生徒が部活動またはクラブ活動に所属していて、体育系種目の一番人気はサッカー、続いて卓球、バレーボール、バドミントン、ダンスが僅差(きんさ)で続いています。現在、バドミントンとダンスは、市内中学校に部活動はありませんが、地域移行になれば、生徒たちのやりたいスポーツを地域クラブでできる可能性は高まります。
学校の教員にとってもメリットがあります。文部科学省の調査によると、中学校教員の約8割が部活動の顧問を担当しており、担当している部活動の約8割が週4日以上活動しています。部活動の指導が教員の勤務時間を延ばす大きな原因の一つになっているのです。そのため、地域移行が進むことで、教員の勤務時間短縮や業務負荷の軽減につながることが期待されています。
■考えられる課題と子どもたちの意向
しかしながら、メリットばかりではなく、地域移行には幾つもの課題があることも事実です。一つめは、地域の受け皿の問題です。移行した地域に適切な指導者がいない、練習場所がない、といった可能性があります。二つめは、子どもたちの居場所が減ることです。学校の友だちとの付き合いや、放課後や週末の時間を過ごすために部活動に参加している中学生もいます。三つめは、保護者の負担増です。これまでは学校内の人材や設備を使っていたことから、外部の指導者の活用や設備を充てることで費用が発生します。活動場所への送迎にもお金と時間がかかります。それらを保護者が負担することになれば、部活動が事実上有料化することと同じです。さらに、家庭の経済状況によって活動に参加できない子どもが出ることもあり得ます。四つめは、指導の過熱化です。将来にわたり続けるスポーツや趣味を見つけるきっかけづくり、人格の形成などが目的で、勝負に勝つことが最終目的ではありません。実際、前述のアンケート調査でも「気軽に楽しく活動したい」と望む生徒の声が一番多く、次いで「レベルにあった指導をしてほしい」という意見でした。こうしたメリットとデメリットを勘案し、幾つもの課題に道筋をつけていかなければなりません。
■地域で考える部活動の役割
そもそも、部活動に期待する役割とは何でしょうか。子どもたちの貴重な中学3年間の部活動のあり方を、皆で真剣に考える時がきています。市としては、地域移行の受け皿となり得る団体などと協議を続け、保護者生徒への説明会を開催するなど、地域の実情に応じて部活動の地域移行を進めることとし、令和9年夏ごろの休日の部活動の地域移行を目指しています。
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