文字サイズ
自治体の皆さまへ

No.188博物館だより 横倉山の蝙蝠(コウモリ)しらべ

48/61

高知県越知町

夜空を飛び回り、昆虫を食べるコウモリ。コウモリが生きるためには、春から秋までの毎晩、昆虫を食べられることと、昼間に体を休められる洞窟や大きな木にできたうろ(樹洞)などが必要です。食べる昆虫や昼間の休み場は、コウモリの種類によって好みがかなり違っています。そのため、多くの種類のコウモリがすんでいる場所は、それだけ多様な環境があり、生物多様性が高いところといえます。
私は、平成13年から四国のあちこちの森林でコウモリ調査を続けています。これまでの調査で、四国にはコウモリが16種類いることが分かりました。そして、徳島県三好市東祖谷見ノ越地域、愛媛県久万高原町面河渓谷、高知県津野町天狗高原では10種類以上のコウモリを見つけることができました。これらの場所はいずれも、標高が高く(1000m以上)、ブナやミズナラなどの落葉広葉樹林が広がり、太い木が残っていることなどの共通点があります。コウモリにとって、とても良い環境がそろっているのだと思います。
さて、横倉山に目を移します。横倉山にはおおよそ1300種を超える種数の植物が見つかっています。植物が多様な場所ではそれだけ多様な昆虫がいることがわかっていますので、横倉山にはコウモリの食べものとなる昆虫が多いと思います。そして、横倉山の標高700メートル以上の地域には、古くから越知町の人々が大切に守ってきた森があります。この森には常緑広葉樹のアカガシの大木やほかにもさまざまな種類の太い木がみられ、コウモリが好みそうな樹洞がたくさんあります。さらに、石灰岩地帯があるこの山には、やはりコウモリが利用しそうな洞窟がいくつも見つかっています。横倉山は、標高はあまり高くないですが、コウモリが暮らすための条件はかなりそろっていると私は考えています。

■珍しいコウモリ
これまで横倉山の調査で見つかったコウモリの中から、珍しい種類を紹介します。
まず、モリアブラコウモリです。日中の休息場として、主に大木にできた樹洞を利用します。全国的に確認数が少なく、生態はまだよく分かっていません。日本固有種で、本州、四国、九州で見つかっています。四国では見つかっている場所がまだ多くなく、高知県内では横倉山を含め6カ所しか見つかっていません。横倉山では、標高640メートルの場所で1回だけ捕獲により確認しました。四国内で他に見つかっている場所はほとんどが標高の高い地域ばかりです。標高が低い横倉山にモリアブラコウモリがすんでいるのは、古くから残っているアカガシの森が関係していると考えています。
次は、テングコウモリです。日中の休息場として洞窟を利用します。このコウモリも日本固有種で、北海道、本州、四国、九州で見つかっています。四国での確認地点数は多くなく、高知県内では横倉山を含めて9カ所で見つかっています。横倉山では、標高400mの場所で1回だけ捕獲しました。これまで行ってきた調査によって、テングコウモリは秋によく確認できることが分かってきています。横倉山で捕獲できたのも10月でした。秋になると、テングコウモリはいつもとは違う生活をしているのかもしれません。
最後に、コテングコウモリを紹介します。ロシア東部、千島列島、朝鮮半島、日本にいます。日本の中では、北海道、本州、四国、九州、屋久島および対馬で見つかっています。以前はあまり記録が得られない種でしたが、大きな枯葉にくるまって日中に休息する行動が最近観察され、その習性を利用した調査方法が普及してからは、あちこちで見つかるようになってきました。高知県では、比較的標高が高い地域で情報が得られます。このコウモリは、高知県で最初に見つかった場所が横倉山です。
(横倉山自然の森博物館学芸員 谷地森秀二)

<この記事についてアンケートにご協力ください。>

〒107-0052 東京都港区赤坂2丁目9番11号 オリックス赤坂2丁目ビル

市区町村の広報紙をネットやスマホで マイ広報紙

MENU