監修:江府町立図書館館長 宇田川 恵理
こんにちは!江府町立図書館の宇田川です。江府町立図書館の本棚にある、ちょっと気になる「こんな本」を、紹介していきたいと思います!
■『ねずみ女房』
ルーマ・ゴッデン作(福音館書店)
古い家の片隅に、1匹のメスの家ネズミが夫と暮らしていました。メスネズミが知っているのは、この家の中の世界だけでした。
ある日、この家に野生のキジバトが連れてこられます。人間につかまり、かごの中に入れられたハトと、メスネズミは次第に言葉を交わすようになります。ハトはネズミに、窓の外の世界について、話して聞かせました。夜の森や、木の梢、畑や遠い山のこと、そして“飛ぶ”ということ。メスネズミは、ハトの話に心を奪われます。
でも、メスネズミには日々の暮らしがありました。夫の世話をし、生まれたばかりの赤ん坊のことしか考えられない幾日かが過ぎ、やっとハトを訪ねると、すっかり力をなくして弱り切ったハトの姿がありました。外の世界を恋しく思うハトの気持ちを知って、メスネズミはある決心をします。
私がこの本を最初に読んだのは、今から30年以上も前のことです。まだ若かった私は、ハトとの出会いに心躍らせるメスネズミに、気持ちを添わせていたように思います。一方、今の私は、物語の最後に語られる年をとったネズミに心惹かれるのでした。読む人によって、いろいろな読み方のできる、大人のための絵本です。
◎世界には知らない事が多い
宇田川館長
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