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自治体の皆さまへ

大切なものは市民で守る ~ 失(うしな)ってからでは手遅(ておく)れだから~

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鹿児島県 指宿市

私達は日頃(ひごろ)、「あるのが当たり前」と思っているものがあります。でも、もしある日、それを失(うしな)うと本当に困(こま)ってしまうものです。私も以前は同じ様に思っていましたが、この町の将来にとって本当に大切なもの、守るべきものを毎日考えていた所、少しずつ色々な事に気づいてきました。

◆鉄道のある町
まず、ひとつ目は、JR指宿枕崎線です。89年前に指宿まで鉄道が敷(し)かれ、さらに枕崎まで伸びて60年が経ちました。生まれる前から走っていたこの汽車が指宿から消えてしまったら?きっと多くの方々は驚き、慌(あわ)てて、「何故(なぜ)こんな事に」と抗議(こうぎ)する声が相次(あいつ)ぐでしょう。
最近の運行(うんこう)状況は、鹿児島中央駅を発車する汽車の半分が指宿まで走り、そのうち3便が枕崎まで走っています。市内にある10ケ所の駅が無人駅となり、駅員のいる指宿駅も午後3時までで、それ以降は観光案内所が代わりを担(にな)っています。山川駅は地元の方が駅員さんの代わりをつとめています。
こうした状況を見て、市民だけでなく久しぶりにふるさとに帰ってきた方々からも、嘆(なげ)きの声や「駅前のにぎわいを取り戻(もど)して」というお手紙などを数多くいただきます。「せめて指宿駅での支払いにスマホやカードを使えないか」「各駅に、もう一度、トイレを」どの声ももっともなご意見で、そうなれば本当に有難いと思います。

◆鉄道を本当に大切にしているか
どのご意見も「鉄道はあって当たり前」、ずっとあるものと思っているのです。私はJRに意見や要望のある方に「ところであなたは月に何回ぐらい利用されていますか?」と伺います。すると「そういえば最近ほとんど乗ってないね」という方が意外に多く、中には「もう何年も汽車に乗ってないなぁ」という方までおられます。鹿児島中央駅やその周辺で、買い物や食事をするのに車で行かれる市民も少なくありません。かつて旧山川町時代の町長さん達は、役場職員の出張には必ず汽車を使う様、厳(きび)しく指導していたと聞いています。今、鉄道沿線(えんせん)の3市で「路線の存続(そんぞく)」を合い言葉に様々な活動をしています。笑い話の様ですが、その陳情(ちんじょう)にすら汽車でなく車で行く事もあった様です。実に失礼な話です。市役所のメンバーですら、最近は「なるべく鉄道を利用しよう」という意識が薄(うす)れている様です。毎日、当たり前に見かける汽車を、将来の市民や観光客が使い続けられるかは、今、私達がどんな気持ちを持って努力をしてゆくかにかかっています。

◆この町で子どもを産める事
今、日本中の市町村が子育て支援や「子ども」を増やす工夫に一生懸命取り組んでいます。その原点にあるのが「出産」だと思います。私のふたつ目の、みんなで大切に守り続けたいものは「子どもを産める病院」です。自分達の町で安心して出産が出来る町が少しずつ減っています。又、妊娠中の健診(けんしん)をはじめ、産前産後に様々な支援を受けられる事がどれだけ大切な事でしょうか。
実は、令和3年度の指宿の出生数は243人でした。そのうち指宿の病院で産まれた子は91人で、全体の半分にもなっていません。ただ、ふるさとに里帰りして、又は近隣の町から産みに来てくれた数が37人でしたので指宿の病院で産まれた子どもはもう少し多いです。指宿(いぶすき)医療センターは、鹿児島大学と協力して産科・小児科・麻酔科の医師がいつでも充分なサポートを出来る様、『安心』を準備しています。さらに指宿市は以前から近隣市と協力して「出産」に必要な医師たちが安定的に働きやすい様に市民の税金も活用して、毎年支援を続けているのです。
私は、やっぱりこの町の将来の為にも「安心して産める場所」を守り続けて残したいのです。指宿で生まれ育って将来この町で出産する人達の為に、どこかに嫁(とつ)いでも実家に里帰りして、父さん母さんに見守られて、子どもを産みたいと思う人達の為(ため)にも、願わくば、この町の病院を多くの方が選んでいただいて、どんどん利用する事で大切な場所を守り続けてゆける様、是非(ぜひ)、ご協力をお願いします。

◆市民の命を守る当番医
最後にもうひとつ、指宿の大切にしたい財産。私たちが病気になったり、ケガをした時に24時間、365日いつでも支えてくれているのが医師会の皆さんによる当番医です。急に体調がおかしくなった時は、かかりつけ医を頼りにしますが、運悪く不在だったり、連絡がすぐに取れない事もあります。そんな時の為に夜間にも休日にも当番医が備えてくれています。
指宿では、ほぼ全ての病院や診療所(しんりょうしょ)が指宿医療(いりょう)センターとワンチームになって、県内で最も安心できる医療(いりょう)体制を作ってくれていると自慢できます。これも、「あるのが当たり前」ではなく、市民が守るべき大切なものだと思います。

(指宿市長 打越 あかし)

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