【特集】生きる力を育む、キャンプのススメ(1)

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■コロナ渦になって人気が高まったキャンプなどの野外活動ですが、その魅力とは。今回はキャンプの魅力に迫ります。
身体活動や知的活動、豊かな心を育む活動を自然に囲まれた場所で行う、キャンプなどの野外活動。人と自然の距離が近くなることで、いつもと違う自分と出会えるきっかけになります。
「野外での不便な生活体験の中で、できるだけ快適な活動ができるように工夫し、問題を解決するために自分で考えて行動する。その達成感は、やった人にしか味わえない」と話すのは、鹿児島大学准教授の福満博隆さん(61)です。
近年、子どもたちを取り巻く環境は変化しており、学校から帰っても外で遊ぶ機会が少なくなっています。「習い事の時間が増え、公園で遊ぶことが減るなどさまざまな体験の機会が減り、何かに挑戦して成長を実感することが少なくなりました。世界的に見て日本の若者は自己肯定感や自己満足度が低いことが分かっています(グラフ)。体験から学ぶ機会や成功体験の減少がその原因の一つです」と福満さんは表情を曇らせます。
体験の機会が減ったことで、成功体験だけでなく失敗体験も減少。「人は失敗から多くのことを学びます。自然が相手のキャンプでは、知識だけでは太刀打ちできず、まさに失敗の連続。それだけに、キャンプで得られる体験は、きっと生きるための力になるはず」と力を込めます。

■創意工夫が人を育てる
「キャンプでは、わざわざ不便な場所に出かけて不便な体験をします。それって、はっきり言ってストレスですよね」と福満さんはおどけます。「ところが、ストレスを克服することで楽しみが生まれ、工夫が生まれ、知恵が付く。つまり人は、ストレスによって成長します。分からないことは人に聞き、助け合うことでコミュニケーション能力が育まれ、社会性も身に付く。失敗を克服していく試行錯誤が成功体験につながり、自己肯定感も生まれる。小さなストレスにあふれるキャンプは、生きる力を育むのに最適な場。自分のペースで取り組めるのも魅力です」

■体験を共有する
キャンプの目的や活動内容はさまざま。1人で自分と向き合う時間を楽しむソロキャンプや、普段はできないさまざまなことに挑戦する冒険キャンプ、家族で楽しむファミリーキャンプなどがあります。「技術や知恵、自然環境の大切さなどを誰かと共有することはとても大切です。それを家族で体験できるのがファミリーキャンプの魅力。特に、子どもに対しては安全教育の場としても役立ちます。例えばナイフで木を削るときに、危ないからと子どもに触らせないのでは、何も生まれません。正しい使い方を実践することで安全な使い方を身に付けることができ、ナイフの価値も見出せます。ただし、教えたからといって目を離してはいけません。野外活動では命に危険が及ぶことも多いので、子どもの安全には最大限の注意を払いましょう」と、くぎを刺します。
「親子でキャンプをするときは子どもに役割を与え、任せてみましょう。上手にできたときは、結果ではなく過程を褒める。失敗したときは、なぜ失敗したのかを振り返り、次はどうすればいいかを一緒に考えましょう。そういった関わりの中で子どもが成長するだけでなく、母性愛や父性愛が育まれます。親子で共有する貴重な時間を楽しみながら、子どもだけでなく親としての成長にもつなげてほしい」

■豊かな自然を次世代に
キャンプを楽しむ人が増えている今だからこそ、自分本位ではなく自然環境に配慮した行動が求められます。「私たちは大自然を間借りして、貴重な経験を得ています。豊かな自然を次世代に引き継ぐためにも、キャンプ体験でSDGs(エスディージーズ)のことも考えてほしい」

鹿児島大学准教授
福満　博隆さん(61)
鹿児島市在住。県キャンプ協会会長。幼い頃からキャンプに連れ出していた娘とは今でも登山をする仲。

●INTERVIEW
「子どもの成長が家族の思い出に」
片平藍海(あいみ)さん(8)、里子さん(44)、慎也さん(48)、麗海(れいみ)さん、(10)、海翔(かいと)くん(8)日置市在住
もともとソロキャンプが好きで、キャンプを家族共通の趣味にしたいと考えていました。ファミリーキャンプを始めて3年目ですが、虫が苦手だった子どもたちはすっかり虫好きに。料理やテント設営の手伝いも任せていますが、今では自分たちで火をおこせるまでに成長しました。平日は家族で顔を合わせる時間も限られているので、キャンプで一緒に過ごす時間はとても貴重。いつか、おやじとあんなことしたなと思い出してくれたらうれしいです。

※内閣府ホームページ「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査(平成30年度)」を基に作成。