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三重大学海女研究センターだより vol.10

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三重県鳥羽市

◆記憶と会話からたどる地域の個性
今回は主要事業であるアーカイブデータベース事業について、最新の成果と、継続するなかでの気づきをまとめてみます。海の博物館に所蔵される、漁業・漁村に関する写真や映像のデータベースを構築する事業で、成果はセンターのホームページで公開し、写真展として地元のみなさんとも共有してきました。写真展は2019年度の国崎に始まり石鏡、波切(なきり)、安乗(あのり)と続き、成果は過去の連載でも紹介してきました。
最近、この事業は学術的なデータベースを構築するだけでなく、地元の魅力や個性を探る試みでもあると強く思うようになりました。写真展では昭和40年代以降の写真を展示するほか、地元に眠る古写真を収集してデータ化しています。
会場には当時を知るかただけでなく、その子どもや孫世代のかたがたもいらっしゃいます。「懐かしい」の応酬だけでなく、地元の歴史や文化を継承する場になっています。
例えばこの写真(本紙参照)は、今年2月の安乗での写真展で地元から提供されたもので、浜に並ぶ竿(さお)にエビ網を干す様子です。「子どもの頃は学校帰りや夏休みに網の取り込みを手伝った」という一方、「化学繊維の網になって竿を使わなくなった」「浜が狭くなった」など、技術革新や環境変化によって浜との関わり方が変容してきたことが語られました。そんな小さな歴史の数々を「知らんかった」「そういうことか」と、若いかたが線のようにつないでいく姿もありました。
また、地元でよく口にされる話題の個性にも気づいたり。漁村同士で共通する話題も多いですが、口にされる頻度や熱量でいえば、例えば国崎では熨斗(のし)アワビをはじめとする伝統行事を受け継いできた誇りと苦労、石鏡では浜の活気や海女の出稼ぎ、子ども時代の荒っぽい海水浴など。安乗では「安乗埼(あのりさき)灯台前の中学校」で盛り上がりました。
年配のかたの思いを、若いかたが「地元らしさ」として町づくりに反映させようとする姿に、よく使われる「地域の個性を発見して活かす」という言葉の内実―地道で大変だけど温かいコミュニケーションの積み重ね―を垣間見た気がしました。
そんなコミュニケーションの息遣いを残すため、最近、地域のかたがたへのインタビューを映像化する活動も始めました。ぜひご協力いただけるとうれしいです。

問合せ:三重大学海女研究センター(三重大学人文学部総務担当)
【電話】059-231-6991

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