文字サイズ
自治体の皆さまへ

誰ひとり取り残さない防災の実現に向けて「地域と守る命」(2)

2/42

京都府福知山市

【みんなの協力が命を守る】
◆僕たちは村みんなでひとつ。逃げるときは、おんぶしてでも連れていく
荒木自治会長 井上良延(いのうえりょうえん)さん

○訓練で初めて感じた避難者のリアルな不安
井上さんは、訓練を通して防災意識がより深まったと話します。
「訓練で初めて、避難時の不安な気持ちを具体的にイメージできました」
情報を集め、不安を解消するためにテレビが必要であること、食料の確保方法など、実際に避難所で過ごして初めて、様々な気づきや課題が見つかりました。
災害から命を守るために大切なのは、とにかく逃げること。
「でも、いくら訓練をして、実際に住民へ避難を呼び掛けても、最後は地域のみんなの協力が必要です」
地域住民全員の命を守るために大切なのは、普段からの近所同士のコミュニケーションだと言う井上さんに、荒木さんもうなずきます。

◆あの時は何も分からんかった。でも、今やったら避難できる
荒木自治会に住む荒木佐都子(あらきさとこ)さん
「高齢者や、私のように足に障害がある者でもこの地域で安心して暮らせるのは、自治会長が立ち上がってくれているからです」
訓練に参加し安心感が高まったという荒木さんは、支援される側も受け身ではなく、訓練への参加や、普段からの非常食や飲料水の備蓄が重要だと続けます。
「平成26年8月豪雨のときは何も分からんかった。でも、訓練に参加した今やったら避難できる。組織を立ち上げてくれたおかげで、ほんまに安心です」

「そう言っていただけるとやりがいがあるね」と微笑む井上さんは現在、過去に起こった災害の傾向から、夜間に避難訓練を行う計画を立てています。
「みんなには、逃げるときは、おんぶしてでも連れていこうと伝えています。僕たちは、村みんなでひとつなんです」

■荒木自治会の取り組みを例に 福知山公立大学 大門准教授の「地域防災ワンポイント解説」
荒木自治会での実際の取り組みを例に、今年から福知山公立大学の准教授に着任した大門大朗(だいもんひろあき)先生が、「地域でできる防災術」を解説します。

◆Point1「地域独自の防災マップを作成し 地域独自の避難スイッチを設定」
荒木自治会では、過去の災害で土砂崩れが起こった場所や徒歩での避難が危険な場所などを記した地域独自の防災マップを作成し、「土壌雨量指数」をもとに避難のタイミングを設定しています。
土壌雨量指数とは、降った雨によって土砂災害の危険度がどれだけ高まっているかを把握するための指標。荒木自治会では地域内の基準を定め、その数値予測が出ると避難することになっているので、避難のタイミングに迷いません。
また、市の広域避難所の他、地域の地区避難所に加え、地域独自でもみじヶ丘病院と連携し、会議室の一室を避難所として借りられることとしています。
→市が作成しているハザードマップと合わせて、昔こんなことが起こったという「地域の経験」を取り入れた独自マップを作成することで、より効果的なマップになります。

◆Point2「モニタリング係や連絡班を設置 業務分担表を作成し住民全員で避難」
自主防災組織で作成した業務分担表では、住民が避難を開始するタイミングを観察するモニタリング係や、避難誘導の声掛けを行う避難者対応班、消防団と連携する班などの役割が設定されています。また、地域住民全員の避難行動につながるよう、LINEオープンチャットを利用したリアルタイムな情報共有体制を整えています。
→あなたが動けば地域の人も変わる?
避難時の心理として、1人よりも、地域や家庭の人の声掛けがきっかけとなって「一緒に」行うことで、避難のハードルが下がることが知られています。

◆Point3「要配慮者の情報を事前に共有 避難に配慮が必要な人への支援体制」
避難のタイミングになれば、各組長から、避難時に配慮が必要な人へ避難準備の連絡を入れています。避難経路の安全が確認できた後に要配慮者の自宅に訪問し、声掛けや自家用車での移送、徒歩での避難の介助をしています。
→「避難が難しい」と諦めていた方にも、近年では一緒に避難できる地域の体制や(福祉)避難所があります。

▽福知山公立大学 地域経営学部 大門大朗(だいもんひろあき)准教授
「誰ひとり取り残さない防災」は、一人ひとりが自己責任で行うだけでは決して実現しません。高齢の方、障害のある方など、自分一人では避難が難しい方もおられます。
ですが、荒木自治会のように地域で助け合う力があるのが福知山の強みです。地域の知恵や助け合い、避難のきっかけづくりを、みんなで力を合わせて取り組むことで、「誰ひとり取り残さない防災」の実現に近づくのではないでしょうか。

問合せ:
地域包括ケア推進課災害時ケアプラン推進係【電話】48-9258【FAX】22-9073
危機管理室【電話】24-7503【FAX】23-6537

<この記事についてアンケートにご協力ください。>

〒107-0052 東京都港区赤坂2丁目9番11号 オリックス赤坂2丁目ビル

市区町村の広報紙をネットやスマホで マイ広報紙

MENU