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特集 布袋座火災から受け継ぐ意志 暮らしを守る消防(1)

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北海道倶知安町

―1943年。倶知安町の映画館で起きた『布袋座(ほていざ)火災』をご存知でしょうか。
3月6日の火災は、全国的に見ても記録に残る大規模なもので、208名もの犠牲者を出しました。今年で80年を迎えたこの惨事を風化させないためにも、今月号の特集では当時の状況や現在の消防について紹介します。

■決して繰り返してはならない『布袋座火災』から80年
▽貴重な楽しみ、映画
戦時中の当時は、テレビが普及しておらず、娯楽といえば、ラジオか映画くらいのものでした。しかし、映画鑑賞ができる機会は貴重であったため、3月6日の夜に開催された産業組合主催の映画会には、招待を受けた700名を超える町民が映画館の布袋座を訪れていました。

▽可燃性のフィルム
現在、映画館ではデータを再生することで上映されていますが、当時は映写機にフィルムを通すことで、映像が流れる仕組みでした。特に、昔のフィルムは燃えやすく、摩擦や静電気でさえも発火の原因となり得ました。
この火災の原因は、映画館の職員が、タバコを吸いながら上映し終わったフィルムの巻き取り作業をしていたためで、午後7時すぎ、「火事だ!」という声が館内に響き渡りました。直後に、700名を超える人たちが一斉に立ち上がり、館内はたちまちパニックになり、騒然としました。

▽豪雪の町、倶知安
当時の倶知安は、除雪体制が整っておらず、建物の1階が雪で埋もれている状態も珍しくありませんでした。
布袋座には、出入口が一カ所、非常口は五カ所ありましたが、発火場所が出入口付近であったこと、除雪がされていない非常口があり、助けに向かった人たちが積もっていた雪をよけてもすぐには開かなかったことから、多くの町民が逃げ場をなくしました。2階の窓から逃げることができた人もいましたが、木造の建物であったことも相まって、火の手がすぐにまわり、1時間ほどで建物が全焼、208名にものぼる死亡者を出した火災となりました。

■倶知安消防の歴史
『布袋座火災』が起きた当時の消防は、どんな形態だったのでしょうか。倶知安消防の歴史と一緒に振り返ります。
当時の消防本部には、8名の常備員が務めており、井戸から水をくみ上げることのできるポンプ車も所有していました。しかし、この時代は道路の除雪がされておらず、冬は車が走ることができない状態でした。
布袋座火災の日、電話も普及していない時代であったため、消防本部の屋上から煙が上がっていることを確認し、サイレンが鳴らされました。腕用ポンプには荷車のように車輪がついていますが、雪で車輪は機能しないため、馬そりに乗せたものを常備員が現場まで走って引っ張って行きました。
当時は、消防本部以外に、現在でいうところの「倶知安消防団」が組織されていました。彼らは「警防団」と呼ばれ、警察および消防の補助として、空襲や災害が起きた際には、町民の避難誘導や消火活動の手伝いを行っていました。
当日は、いち早く駆けつけ、積もった雪で開かなかった非常口の開放や避難の誘導などに尽力しました。消火後は、亡くなった人の運び出しにも協力をしました。

▽現在の消防団
現在は、全国的に見て消防団員は減少傾向にありますが、倶知安では、常に定員を上回っている状態が続いています。その中には、女性や外国人もおり、全国的に見ても珍しい状況にあります。
消防団員の多くは、他に仕事をしていますが、火災などの災害時のほか、避難訓練や地域の子どもたちへの心肺蘇生法のレクチャーなどにも出動し、安全のために活躍しています。

■倶知安消防史
・1905(明治38)年7月「私設消防組」を創設
・1906(明治39)年11月私設消防組を「公設消防組」に改組
・1913(大正2)年9月初の消防自動車を購入
・1927(昭和2)年消防本部庁舎建設
・1936(昭和11)年4月常備消防部を設置
・1939(昭和14)年4月消防組を「警防団」に改組
・1943(昭和18)年3月6日『布袋座火災』
・1947(昭和22)年7月「倶知安町消防本部」を設置
・1947(昭和22)年9月警防団を「倶知安消防団」へ改称
・1954(昭和29)年初の消火栓設置(上水道の通水による)
・1960(昭和35)年7月「倶知安消防署」を設置
・1965(昭和40)年10月役場庁舎に消防庁舎を併設、移転
・1973(昭和48)年4月羊蹄山ろく消防組合設立倶知安消防団を「羊蹄山ろく消防組合倶知安消防団」へ改称
・1990(平成2)年1月羊蹄山ろく消防組合消防総合庁舎が落成
・2018(平成30)年4月羊蹄山ろく消防組合山岳救助隊が発隊
・2022(令和4)年4月倶知安消防団女性分団とニセコひらふ分団を新設

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