文字サイズ
自治体の皆さまへ

特集 倶知安のじゃがいもができるまで(2)

5/33

北海道倶知安町

■ちょっと待って!農地には入るべからず
7月ころ、薄紫色や白色のじゃがいもの花が満開となり、緑色の羊蹄山と美しい景色を生み出します。
写真を撮ったり、花を近くで見たくなりますが、農地は立ち入り禁止です。なぜ入ってはいけないのでしょうか?

▽一度入り込むと防除はほぼ不可能!ジャガイモシストセンチュウ
これは、じゃがいもに寄生する害虫です。
この害虫が根に刺さると、じゃがいもは栄養を吸収できず、実をつけることができないまま、枯れてしまいます。
・体長1ミリ程度で目に見えず、細長い形をしている
・メスは1匹あたり、数百個の卵を体に蓄え、卵や幼虫を守るための膜になる(シスト化)
・寄生するじゃがいもがない場合でも、乾燥や低温などの条件下で長年生存し続けることが可能
・数年後、幼虫がいる農地にじゃがいもが植えられると、シストから幼虫が飛び出し寄生を開始する

▽シストが広がるのは、人が原因!
自身で農地移動はできず、靴などについた土から他の農地へ侵入する。

安定した生産を行うためには、原原種・原種・種いもは、「健全無病」でなければならないため、一度でもシストセンチュウが農地に入り込んでしまったら、その農地では二度と原原種・原種・種いもを生産することはできなくなってしまいます。
生産者は日々、原原種・原種・種いもの農地に入る前にトラクターなどの洗浄や衣服の交換、長靴の土をきれい落とすなど、細心の注意を払って、じゃがいもの生産を行っています。そのため、むやみに農地に立ち入ってはいけません。

▽未然に防ぐことが大事!大和原種圃場の対策
シストセンチュウは、新たに農地へ持ち込まないことが重要になるため、大和原種圃場では、関係者以外を立ち入り禁止としています。
また、関係者でも敷地内に入る際には、長靴を履き替え、水で土を落とすことで、害虫や病気を持ち込まないよう徹底しています。

▽シストセンチュウに負けない!抵抗性品種
近年のじゃがいもは、シストセンチュウに対抗できる品種が増えてきています。
倶知安でも生産されている「キタアカリ」「とうや」「きたかむい」は、抵抗性品種と呼ばれ、シストセンチュウに寄生されると抵抗反応を示し、シストセンチュウはじゃがいもの根から十分な栄養を吸収できず、成育途中で餓死します。

■倶知安のじゃがいもを守り続ける農家さん
▽種いも農家/倶知安町種馬鈴薯生産組合副部会長 波方真純(なみかたますみ)さん
農家歴:30年目
好きな品種:男しゃく
「じゃがバター」でほくほく感を楽しむのがおすすめ!カレーやみそ汁、何にでも合います◎

代々続く農家を受け継ぐ波方さんは、「男しゃく」「キタアカリ」の2品種の種いもと食用いもを生産しています。

種いもは、害虫がついたり、病気になると種いもとして使用することができなくなります。
そのため、食用いもと異なり、計6回の厳しい検査が行われます。そこで、シストセンチュウが出ると、その農地の一角が全て駄目になるため、いつも緊張します。
種いもは生産までの行程が多く、食用いもより手間がかかりますが、次の年に美味(おい)しいじゃがいもを倶知安の農家に作ってもらうため、また、倶知安の歴史を紡ぐためにも、誇りを胸に種いもを作り続けています。

▽食用いも農家/倶知安町畑作生産組合食用馬鈴薯部会部会長 蒔田久法(まきたひさのり)さん
農家歴:22年目
好きな品種:男しゃく
「ふかしいも」で素材の味をそのまま味わうと絶品!男しゃくは万能なので、サラダやフライドポテトにも◎

サラリーマン経験を経て、実家を継いだ蒔田さんは、「男しゃく」「とうや」「きたかむい」の3品種を生産しています。

作物は、天候により出来が左右される難しさがありますが、農家は自営業で、自分で考えて作業を進められる面白さがあります。
「男しゃく」は昔からある品種で、大きくなりづらく、変形やシストセンチュウへの抵抗がないなど、生産効率は決して良くありません。
しかし、倶知安では100年以上も作り続けられてきた歴史ある品種であるため、今後も守り続けていきたいです。
毎年、一生懸命美味しいじゃがいもを育てていますので、たくさん食べてください。

<この記事についてアンケートにご協力ください。>

〒107-0052 東京都港区赤坂2丁目9番11号 オリックス赤坂2丁目ビル

市区町村の広報紙をネットやスマホで マイ広報紙

MENU